古代の小麦「ヒトツブコムギ」ってどんな味?

ヒトツブコムギ

小麦は食べるな!」という本を読みました。
著者は、アメリカの循環器専門医、ウイリアム・デイビスさん。
小麦の、食材としての安全性を問いなおす、なかなか刺激的な本ですよ。

同著には、こんなことが書かれています。

現代の小麦は、肥満を始めとして、神経障害・糖尿病・心臓疾患・関節炎・発疹といった様々な体の不調の原因になっている。

大昔から、人類は小麦を食べていたそうです。
ただ、長い時間をかけて行われた品種改良の末、小麦は、人体に害を及ぼす、まったく異なる植物に変化してしまったそうなんです。

とても興味深いテーマですが、小麦の危険性については、また別の機会に譲ります。
今回、私がいちばん興味を持ったのは、そこではなくて、現代の小麦でつくったパンと、古代の小麦でつくったパンの食べ比べなんです。
こういうマニアックな食べ比べ、大好きです。

小麦の先祖、「ヒトツブコムギ」

デイビスさんによると、現在世界中で栽培されている小麦の先祖にあたるのは、「ヒトツブコムギ」という品種だそうです。

実はこのヒトツブコムギ、現在でも存在するんです。
中東・南フランス・北イタリアではごく一部の地域でいまだに栽培されていますし、他の地域でも、まれに野生化したものが見られるのだとか。

ヒトツブコムギ

Einkorn wheat (and some bread wheat), Kastamonu by Mark Nesbitt is licensed under CC BY 2.0 Deed

こちらの写真に写っているのが、ヒトツブコムギです。
現在の小麦とくらべたら、背丈がヒョロッと長いのが特徴です。
見るからに自然災害に弱そうな感じがしますね。


ヒトツブコムギとパン用小麦の比較

Left: bread wheat; right: einkorn by Mark Nesbitt is licensed under CC BY 2.0 Deed

また、穂の大きさがまったく違います。
写真左が、現在のパン用小麦の穂。右がヒトツブコムギの穂。
収量を向上させるべく、長年にわたり品種改良が行われてきたことがよくわかりますね。

ヒトツブコムギでつくったパンの味は?

さて、ここからが本題。「現代の小麦でつくったパン」と「古代の小麦でつくったパン」の違いです。
デイビスさんは、実際に食べくらべています。
それがまた興味深い。
デイビスさんの感想をまとめるとこうなります。

ヒトツブコムギでつくったパンは、現代の小麦でつくったパンと比べて、以下の違いがあるようです。

  • パン生地の様子
    伸びが悪く、手にくっつくため、丸めにくい。そのため、形成しにくい。
  • パン生地の匂い
    現代の小麦のような、はっきりしない匂いとは違って、ピーナッツバターのような匂いがする。
  • パンの膨らみ
    現代の小麦にくらべて、膨らみはずっと小さい。
  • パンの味
    木の実のような味で、渋い後味がある。

ヒトツブコムギでつくったパン、私も是非食べてみたいです。
そう思ってネットの情報を探したんですけど、難しそうなんです。

私としては、なんとなく、濃厚な旨味があるパンを想像しているんですけど、実際のところどうなんでしょうね。
現代に生きる私が、かならずしも美味しいと思えるような味ではないのかもしれません。

それに、ヒトツブコムギでパンを作るのも大変そうですよね。
そうしたことを考えると、人類が小麦を改良してきた歴史って悪いことばかりじゃないんだと思います。

でも、デイビスさんは、おっしゃいます。
自然災害に強く、収量が高い小麦を嗜好した一方で、人間の体に与える影響がおざなりにされてきたのだと。

現代の小麦に潜む問題。
この問題については、またいずれ記事にしたいと思います。

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