山口晃の描く日本橋。悪名高き「首都高高架」に趣を取り戻す。

2016/08/30

syamaguchi-akira

これは、山口晃という画家による新作の浮世絵です。
「新東都名所 東海道中 日本橋改」と題されたこの作品、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような作風ですが、実は現在の日本橋周辺の様子が描かれています。

よーくご覧ください。画面の下の方に見えるのは日本橋。そしてその上には首都高が走っています。日本橋界隈をご存じの方には、見覚えのある風景ではないでしょうか。

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首都高をまたぐ太鼓橋

さて、とは言いつつも、実際の風景にはないものが、この絵には描かれています。それは、画面上部にある太鼓橋。この橋は、山口晃さんがつけ加えたものなんです。

彼は、この架空の橋についてこんなことを言っています。

高速道路をよく言う方が少ないので、じゃあ高速の上にかけるとおあいこぐらいでは。

たしかに、日本橋の上を走る首都高の高架は、実に悪名が高いです。頭上から押し迫ってくる圧迫感。日本橋周辺をご存じでない方であっても、下の写真を見れば、その評価に納得することでしょう。

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頭上を首都高の高架が覆っていることで、趣のある日本橋が台無しです。
けれども、いくら邪魔だ!邪魔だ!と文句を言ったところで、そう簡単には高速道路を撤去できるはずもありません。
もし仮に取り外すことができたとしても、この日本橋に見合った理想的な景色を私たちは本当につくることができるのか、はなはだ疑問です。現代の東京にあって、異質なものは、高速道路ではなくむしろ日本橋の方であるようにすら思えてきます。

山口晃さんは、街の景観を成している高速道路の存在を否定しません。むしろ彼は、この浮世絵によって、多くの人に高速道路が受け入れられるための素地を築いているように思います。頭から否定するのではなく、まずは受け入れてみる。私たちが住む町を建設的に考えるためには、このような柔軟な感覚が必要であると、山口晃さんは言っているように思います。
古典的な日本画に傾倒しながらも、山口晃さんの作品が注目され続けるわけは、現実を否定せずに受け入れようとする彼のそんな姿勢にあると私は思います。

日本橋付近の現在の様子

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こちらは、日本橋付近の現在の様子です。山口晃さんが描いた構図は、この近辺だと思われます。
この画像を見ると、現実の風景にとても忠実に描かれているのが分かります。
山口晃さんの絵の右脇に描かれたビルはスルガ銀行。左脇にあるのは、野村証券本社ですね。

山口晃による浮世絵の製作過程

冒頭で紹介した山口晃さんの浮世絵は、アダチ版画研究所というところが制作されたそうです。この動画には、浮世絵がの制作過程が残されています。

安藤広重(歌川広重)の日本橋

◆歌川廣重◆【日本橋 朝之景】東海道五拾三次◆保永堂版復刻◆額装

日本橋といえば、安藤広重のこの絵が思い浮かびます。山口は、この絵の現代版をつくることを意識したに違いありません。

今回紹介した「新東都名所 東海道中 日本橋改」は、東京・両国の江戸東京博物館20周年記念特別展「日本橋 描かれたランドマークの400年」に展示されています。また、現在、限定150部がアダチ版画研究所で販売されています。

参考資料: 「首都高の上に太鼓橋 山口晃さんが描く日本橋」 朝日新聞
画像引用元:アダチ版画研究所にぽぽのお散歩日記

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