西洋医学の医者30人に聞いた「プライベートでも使いたい漢方薬」が、テレビ番組で話題になっていました。
取り上げられた漢方薬は次の4種類です。
- 葛根湯(かっこんとう)
- 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)
- 五苓散(ごれいさん)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
今日はこれらの漢方薬の特徴と、同番組の調査に参加された先生方のコメントをご紹介します。
(一部情報元:「林修の今でしょ!講座」2014年12月16日放映)
風邪には「葛根湯」
西洋医で漢方薬のスペシャリスト新見正則先生によると、漢方薬は、何種類もの生薬によってできているため、幅広い症状に効果があるのが特徴だそうです。
ちなみに西洋医学の薬は、それとは逆に、特定の症状にピンポイントで効くようにできています。それぞれに良さがありますね。
さてここからは、漢方薬の中でもかなり知名度の高い「葛根湯」についてお伝えします。
新見先生によると、葛根湯には風邪を中心に、次のようなたくさんの症状を治す効果があるそうです。
葛根湯には、体を温めるという7種類の生薬が含まれています。
葛根(かっこん)・麻黄(まおう)・桂皮(けいひ)・芍薬(しゃくやく)・甘草(かんぞう)・大棗(だいそう)・生姜(しょうきょう)です。
新見先生によると、この中で最もパワーがあるのは麻黄。麻黄は、体の中の熱を上げて免疫力を高めてくれる働きがあります。
ちなみに、葛根湯よりも麻黄が多く含まれた「麻黄湯」という漢方薬を飲むと、風邪などの熱が出る症状の改善に、より効果が期待できるそうです。
葛根湯を日常的に使っているという、西洋医学の先生方のコメントをいくつかご紹介します。
葛根湯は、風邪の引き始めにも効果があり、西洋薬にくらべて即効性もあるようですよ。
朝、診療していて風邪っぽいかなというときに葛根湯を飲んでおくと、お昼くらいには風邪っぽさがなくなっている。風邪の初期症状に、葛根湯はものすごく良いです。
たけぶちファミリークリニック
竹渕一宏先生
西洋薬では(風邪の症状が治るまでに)時間がかかるけれど、葛根湯は(風邪の症状の)改善が早いと思います。
菊池脳神経外科・整形外科
菊池邦夫先生
風邪薬としても使えるし、肩こりとしても使える。中耳炎の時にも使えますから、そういう薬は家に置いてもいいし、旅行に行く時も便利なんじゃないかな。
西洋医学の薬だと何種類も揃えていなければいけないのが、葛根湯ひとつで広い範囲をカバーしてくれるのですごく便利。芝大門 いまづ クリニック
今津嘉宏先生
足がつった時には「芍薬甘草湯」
次にご紹介するのは、足がつった時に効く「芍薬甘草湯」。
新見先生によると、「芍薬甘草湯」は他にも次のような症状に効果があります。
なぜ「芍薬甘草湯」が筋肉痛に効くのか、そのメカニズムは、未だはっきりとは解明されていないそうです。ただ生薬の1つである「芍薬(しゃくやく)」が、筋肉の緊張を緩和する作用があるのではないかと言われているようですよ。
新見先生によると、芍薬甘草湯には即効性があります。足がつってしまった時、またつりそうな時に飲むと、およそ6分で効果があらわれるということです。
「芍薬甘草湯」を自宅に常備されている先生方のコメントによると、スポーツや山登りには重宝するみたいです。
筋肉がつった時に飲みましたけど、す~っと痛みがとれてそのあと楽です。
健内科クリニック
深井健一先生
(筋肉がつったあと)飲んでから10~15分で聞いて即効性があるんですけど、「今日は山登りするぞ」と途中でつらくなっちゃいけない時に前もって飲んでおくと、(足を)つらなくてすむ
芝大門 いまづ クリニック
今津嘉宏先生
自分もスポーツもやるので、そのスポーツの前に飲んでおくとか、マラソンの時には芍薬甘草湯を持って、走って足がつらない準備をしている。
アクア メディカル クリニック
寺田武史先生
ちなみに新見先生は、トライアスロンを楽しまれるそうですが、その際には芍薬甘草湯がポケットに常備されているということです。
二日酔いや子供の体調不良に「五苓散」
「五苓散」という漢方薬は、大人から子供まで幅広い年齢層が使える漢方薬。
大人には二日酔いの症状の緩和に。たくさん水を飲みながら、五苓散を飲むとスカッとするそうです。そして子供には、新見先生いわく「どんな症状でも子供がうったえれば飲ませて良い」そうです。
なぜ「五苓散」は子供にとっての万能薬なのか、それは体内の水分の代謝が改善できるから。大人にくらべて体内の水分量が多い子供は、水を調整することがとても大事なのだそうです。
「五苓散」に含まれている5種類の生薬のうち、4種類の生薬、猪苓(ちょれい)・茯苓(ぶくりょう)・蒼朮(そうじゅつ)・沢瀉(たくしゃ)は、足のむくみなど体の一部に水が偏ってしまう状態を改善する効果があるそうですよ。
「五苓散」は次のような症状に効きます。
二日酔いになったあとだけでなく、お酒を飲む前に飲んでもよいようです。「五苓散」の効果をご存知の先生方のコメントは、次の通りです。
最近はあまり深酒はしませんが、若い時は五苓散を飲んでから忘年会へ行くことがありましたね。
新橋おひさまクリニック
前田清貴先生
五苓散は二日酔いの特効薬。酒を飲む前に飲んでも良いですし、二日酔いになったあとに飲んでも良い。
和田堀診療所
樫尾明彦先生
様々な二日酔いの薬が出ている中で、五苓散が最も効果が強いと思います。
松原整形外科・内科
松原充徳先生
女性の更年期障害に「加味逍遥散」
最後にご紹介するのは、女性の更年期障害や自律神経失調症の改善に、漢方の中では最も効果があると言われている「加味逍遥散」。
「加味逍遥散」が効く症状は以下の通りです。
新見先生によると「加味逍遥散」の中で最も注目したい生薬は、柴胡(さいこ)。
柴胡はこじれた症状の特効薬で、急性期を過ぎて長引いた病気や、困った病気に効果を発揮する可能性があるそうです。
また当帰(とうき)には、特に女性の血流を改善する効果が期待できるということです。
更年期によるイライラなど、感情のコントロールが上手くできない時に飲むと良いようですよ。
女性のストレスによるイライラに対する薬っていっぱいあるんですよ。その中でまずいちばん最初に出す薬。
女性医療クリニック
関口由紀先生
朝起きても会社に行きたくないとか、職場であの人の声が聞こえると途端に元気がなくなってしまうとか、特にホルモンの関係が絡んでいる若い女性の場合、ホルモン剤などを使わずに気持ちを持ち上げる加味逍遥散に、非常に魅力を感じる。
くどうちあき脳神経外科クリニック
工藤千秋先生
状況を打破するパワーのようなものがうまれてくるんですよね。周りが変わらなくても、自分から変えていける力が出るんだなと、加味逍遥散を飲んで実感しました。
祖師谷みちクリニック
チータム倫代先生
ところで、西洋医学と漢方にお詳しい新見先生は、漢方薬だけに偏った薬の使用を必ずしも薦めてはいません。
風邪くらいだったら初めから葛根湯という選択肢も悪くはありませんが、あくまでも漢方は困った時に初めて飲むもの。
今は診断できる能力が進んでいるので、診断できるものは診断して、まずは西洋薬を使ってピンポイントで治すことを考えるべきだということです。
漢方は保険が効く上に安いので、困った時には漢方という選択肢があると心にとめておくといいですね。
ちなみに私は、冷え性がなかなか改善されないため「婦宝当帰膠」を飲んでいます。飲み始めてもうすぐ半年になりますが、徐々に温かい体が復活しつつあります。漢方薬の効果に驚いています。