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岡倉天心の泰東巧藝史。東洋と泰東、美術と巧藝の違い。

投稿日:2010年5月27日 更新日:

日本美術史

岡倉天心による「泰東巧藝史」の講義筆記録を読みました。
講義が行われたのは東京美術学校。現在の東京藝術大学美術学部の前身となった学校です。

泰東巧藝史。聞きなれない言葉ですね。分かりやすく言うと、「東洋美術史」に近い意味になります。
しかし天心は「東洋美術史」とは言わず、あえて「泰東巧藝史」と表現しています。

それはなぜでしょうか。

そこには、美術も含めた芸術に対する、天心の熱い思いが込められています。

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「泰東巧藝史」の意味

日本美術史

天心は、「東洋美術史」のことを、あえて「泰東巧藝史」という言葉に置き換えて表現しています。

なぜこのような分かりにくい表現をわざわざしているのか、天心は、その理由を次のように語っています。

「巧藝史、美術史は古来の名品を識(し)りて吾人の批判力を養う事を目的とす。けだし本講に美術の語はやや妥当ならず、藝術または巧藝の語を用いるをもって適当とせる範囲をも包含す。また東洋という字はOrientの訳にして、OrientとはEuropeより見てしかいう。GreeceなどはOrientの中に含まるるも今は略し、ただ東亜もしくは泰東という。すなわち本講は泰東巧藝史の名前をもってすべし。」
(平凡社 「日本美術史」より)

天心は、当時誕生した「美術」と「東洋」という言葉=概念に対して、否定的な考えを持っていたようです。

美術と巧藝

天心が活躍した明治の時代、「美術」は視覚芸術を表す概念として世に浸透していきました。
その「美術」という概念に対し、天心は、より幅広い諸芸術の意味を「巧藝」という言葉に託しました。

美術は、天心が言う「巧藝」の一部なのです。

ちなみに「巧藝」には、書も含まれます。
「泰東巧藝史」では、工芸などと並んで、書についても触れられています。

東洋と泰東

先ほど引用した天心の言葉を読むと、当時の「東洋」という言葉には、ヨーロッパ側の目線が、色濃く反映していたことが分かります。

「東洋」という括りにしてしまうと、日本からの目線ではなくなってしまうのです。
そのため天心は、「東洋」ではなく、わざわざ「泰東」という言葉を使ったようです。

また、アジアの一国である日本という立場から視覚芸術を語ろうとしている、天心の考えも伝わってきます。

東洋美術史と日本美術史は、現在は、基本的には別々に語られます。でも当時は、その線引きが曖昧でした。
ただこの時すでに、東洋美術史から日本美術を除外する考えが、日本には浸透していたようです。
天心は、そうした考えとは距離をおき、アジア史の文脈の中で、日本を捉えようとしていました。

無理矢理日本だけに特化している今日の「日本美術史」とは大きく異なり、諸外国との関係性から美術(諸芸術)史を語る天心のスタンスが、とても興味深いです。

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