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岡倉天心が描く、茶人・千利休の生涯。天心の理想の生き方。

投稿日:2010年6月2日 更新日:

岡倉天心 茶の本

岡倉天心の著書「茶の本 (岩波文庫)」は、茶人・千利休の死で締めくくられています。

千利休は、長年親しかった豊臣秀吉の怒りにふれ、自害を言い渡されて、潔く切腹します。

切腹する日に利休が開いた、生涯最後の茶会。
その茶会について、岡倉天心は、同著の中でかなり詳細に描写しています。

天心によってかなり脚色されてはいますが、その詩的な文章は、なかなか素晴らしいと思います。

その辺りを、同著より引用します。

天心が描いた、千利休の最後の茶会

天心は、偉大な茶人たちが芸術の分野に及ぼした大きな影響について語ったうえで、次のように利休の死を総括しています。

われわれが人生とよんでいる、このおろかしい辛苦に満ちた、騒然たる海の上の生活を適当に律してゆくこつを知らない人々は、表面的には幸福で充足しているかのように装いながら、そのじつはたえず悲惨な状態におかれている。

われわれは精神の安定を保とうとしてはよろめき、水平線上に浮かぶいずれの雲にも、嵐の前兆を見る。
しかし永遠にむかって押し寄せる大波のうねりのなかにも、よろこびやうつくしさはあるものだ。
なぜ人々は大波の心に共鳴しようとしないのか、・・・美とともに生きた者のみが、うつくしい往生を遂げることができる。

偉大な茶人たちの最後の瞬間は、その生涯とおなじようにきわめて風流なものであった。
つねに宇宙のリズムとの調和のなかに生きようとつとめながら、いつでも未知の世界へゆく覚悟ができていた。

日常の細かなとりとめもないことに、人は心を奪われてしまいがちです。
そして、「水平線に浮かぶいずれの雲にも、嵐の前兆を見る」ように、些細な出来事に、常に怯えて生きています。

でも利休は、そうした近視眼的な生き方とは対照的に、常に永遠の時の流れの中に身を置き、人間という存在の儚さと向き合っていた。天心は、この文章を通じてそう語っているように思います。

天心は、このような利休の生き方に強く共感したのでしょう。
天心自身が抱いた理想の生き方が、利休の生涯とともに、ここに記されているように感じました。

画像引用元:matcha by rumpleteaser

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