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「偉大な美術史」を守るために贋作の摘発に躍起になることへの違和感

投稿日:2010年6月11日 更新日:

2010年6月30日からロンドンのナショナルギャラリーで開かれる展覧会「徹底調査 贋作と誤りと発見」において、ボッティチェリの贋作が展示されるそうです。

展示されるのは、ロンドンのコートールド・ギャラリーが誤って購入してしまった作品。
その作品は、贋作と判明した後、ただちに壁から外されて倉庫にしまい込まれ、以来ほとんど表に出ることはなかったといいます。

しかし近年、作品を分析する技術が進歩したことによって、贋作を判別する精度が向上したことから、再び人目に晒されることになりました。
贋作を見分けることへの自信が増したことで、美術館や博物館はむしろ贋作を紹介することに積極的になったようなのです。

(一部情報元:「ニューズウィーク日本版」2010年6月号)

贋作は美術の歴史の流れに傷をつけるのか?

情報元の記事は、贋作の評価について、次のような疑問を投げかけています。

作品の評価が有名芸術家の署名の有無ではなく美的な価値によって決まるなら、かつて傑作と賞賛された絵画が、「贋作」展覧会のときにしか日の目を見ないのはなぜか。

美は誰が生みだしたものであろうと、美であることにかわりはないのではないか。

美しい作品は、誰が作ったものであろうと美しい。私もそう思います。

ただ同記事は、これまで哲学者や美術史家がこの問題について大いに悩んできたとしながらも、以下のように結論付けています。

問題は贋作者、とりわけ芸術家を志したが挫折し、美術界に復讐を企てる贋作者がテクニックと創造性を混同しがちなことにある。
偉大な芸術家とはその両方を併せ持つ者にほかならない。・・・つまり贋作の真の問題点は、美術の歴史の流れに傷を付けているところだ。

この記事を書いた人物の詳細は分かりませんが、「美術の歴史」を大層なものとして捉えているのがよく伝わってきます。

私もアートの世界に身を置いていたことがあるので、そうした感覚を理解できないわけではありません。
ただ一方で、この意見に強い違和感も覚えるのも事実です。

というのは、「美術の歴史」などというものを意識しているのは、美術界の人間だけであって、その外にいる一般の人々にしてみれば、ある意味どうでもいい話だからです。

狭い世界の中で必要以上に美術史を崇めて、その偉大な美術史を守るために贋作の摘発に躍起になる。そんな風に思えてしまうんです。

コレクションの中に贋作が紛れ込んでいたとしても、それが本当に素晴らしい作品であるのなら、美術の歴史を傷つけることにはつながらないと私は思います。

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