やまでら くみこ のレシピ

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東西の「滲み」について

投稿日:2010年7月14日 更新日:

 矢代幸雄さんの「水墨画」という本を読んでみました。
 水墨画の墨の「滲み(にじみ)」を見る時、そこに東洋的あるいは日本的なものを感じる人は意外と多いのではないかと思います。私のことを言えば、感じる以前に”滲み=東洋的・日本的”のような図式が頭の中に染みついているような気さえします。ところが矢代さんは、「滲み」には東西かかわらず人間の心にしばしば共通する感覚があると言っています。
 矢代さんによると、レオナルド・ダ・ヴィンチの「絵画論」の一節には、西洋の文献には珍しい”偶然に出来た絵の具の汚れ”(滲みに通じるもの)についての記述があるそうです。それは風景画を軽視する画家ボティチェリのはなしから始まります。
 ボティチェリは、”風景研究はくだらない。風景など、絵の具を染み込ませた海面を投げつけただけでも描けるではないか。”と常日頃考えていたそうです。単なる絵の具の汚れでさえ風景に見えるというのです。それに対してレオナルドは、厳格な研究に基づかなければ決して偉大な絵を描くことはできないと厳しく批判しているのですが、一方でボティチェリの絵の具の汚れに対する感覚を認めています。

「それはたしかに本当である。その汚れの中には、人が若し見いだそうと願うならば、あらゆる想像、すなわち人間のいろいろな顔でも、雑多な動物でも、或いは戦争、或いは巌石、或いは波浪、或いは雲煙、或いは森林、等々をも、見いだすことが出来る。すなわちその汚れは、見ようによっては、それぞれの物の感じを出していること、ちょうど、諸君が一つの鐘の音を聴いて、しかもその鐘の音のうちに、諸君が各々自分にいいかけていると想像する、いろいろの声を、聴き取り得ると、同様である。しかしながら、これらの壁上の汚点は、諸君に想像を与えるけれども、一つの物象の正格なる描写を教えるものではない。されば、かくのごとき壁上の汚点を手本にしていては、かような画家は貧弱なる風景を作り得るに過ぎない。」

 著者はこの文献から、西洋においても決して「滲み」に妙所を感じることが無かったわけではないと言っています。けれどもその後、東西における画材の違いを主な要因として、「滲み」の感覚を生育するか否かに分かれていったのではないかと結論しています。
 私達には、東洋・西洋を、また日本・西洋を無意識のうちに必要以上に分け隔てて考えるクセがあるのかもしれません。このレオナルド・ダ・ヴィンチの一節はそんなことを考えさせてくれました。

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