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皇居前広場に立ち込める「マイナスガス」について

投稿日:2010年7月18日 更新日:

先日読んだ「空想皇居美術館」がきっかけで、皇居前広場に興味を持ちました。それまで私は、この広場について思いを巡らせたことが一度としてありませんでした。皇居の前にあるだだっ広い空間であることを漠然と知っていただけです。しかしそれは何も私だけではなく、著者の林さんがいうところの皇居前広場の”空白期”に生まれ育った世代には共通する感覚なのでしょう。
皇居前広場は本来、天皇に関する儀礼や行事を通して天皇像を演出する場所でしたが、敗戦直後には、占領軍によるパレードや左翼勢力の政治集会なども盛んに行われたようです。ちょうど同じ頃、恋人達の憩いの場として注目を集めたこともあったそうです。しかし1952年の憲法5周年式典を堺に、一転して殆ど使われなくなります。林さんは、その後約30年間を皇居前広場の”空白期”(1952?86年)と設定しています。そして、その頃から広場に”マイナスガス”が立ちこめはじめ、現在に至ると言っています。
”マイナスガス”とは建築史家である藤森照信さんが皇居前広場を表現するために使った言葉です。藤森さんの「建築探偵の冒険・東京篇」の一節は、現在の皇居前広場の独特の雰囲気を鋭く指摘していると林さんは言っています。皇居前広場に立ったこともそれについて考えたこともない私にも、それは皇室を取り巻く雰囲気としてリアルに響いてきます。

「皇居前が県庁前や町の公園と同じかというと、これが全くちがう。物量が放射するプラスの威風は感じないのだが、代りに、ここでは鼻をかみづらいとか冗談をいいづらいとか、何々をしてはいけないという打ち消しのマイナスガスが立ち込めている。このガスは、濠の奥の方の水と緑が接する暗い辺りから涌いて、二重橋を包み、二重橋前の広場に流れ出てくる」

林さんは、いまなお残る「菊のタブー」をなくし、皇居移転や天皇制廃止を含んだ形での完全な言論の自由を獲得するためには、この「マイナスガス」を断ち切らなければならないといっています。私はこれを大変まっとうな見解だと思います。でも、この私の同調には、もっとずっと冷めた感覚が伴っています。私よりずっと若い世代にとっては、さらに温度差を感じることなのかもしれません。私が皇居前広場を知らなかったように、平成生まれの若者の中には、昭和天皇すら知らない子達がいるようです。世代の差はあって当たり前のことですが、ある時流れ出た「マイナスガス」がその隔たりをさらに大きくしているのかもしれません。このような世代間の断絶は、未来を共に模索する上で、大変不幸なことだと思います。

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