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存在を感じさせない存在感のある建築 <瀬戸内国際芸術祭報告7>

投稿日:2010年9月29日 更新日:

 「海の駅なおしま」は、妹島和世+西沢立衛/SANAAの設計による直島・宮浦港のフェリーターミナルです。
 それをはじめて見た時は、正直、貧弱な建物だと思いました。遠くから眺めただけだったので、ガラスでできた壁が見えにくく、何本かの細い柱と平たい屋根だけの簡易的な建物に見えました。何が良いのか全く分かりませんでした。けれども、数日通ううちに、私はそれに不思議な開放感を感じるようになりました。その中にいると、なぜかその建物の存在を忘れてしまいます。そして、そこに集う人達が一つの塊として浮き彫りにされるように感じました。なぜ建物の存在が消えたように感じるのか、妹島さんの言葉から探ってみました。

 妹島さんは、御自身が設計したローザンヌのROLEXラーニングセンターについて、「中をずっと歩いていくと、建物のエッジが見えないから、(その)形が把握できません。」と説明しています。なるほど、たしかに「海の駅なおしま」もエッジが見えにくくなっています。これは、建物の存在を漠然とさせてしまう大きな要素だと思います。

 また、妹島さんの曲線に関する次のような考えも気になりました。
 「自由曲線は、より感覚的なものだと思います。数学的な曲線のように一言で表せるものではないから、たくさん言語が必要になるんです。自由曲線とかフリーハンドのラインは、数式で定義しようとすると、おそろしく複雑なものになる。けれども、感覚的には非常にシンプルです。逆に、よりストレートに、人間の感覚に近づいてきているとも言える。「自然」に近いのだと思います。人間は電車や車のような直線では歩かない。実際はもっといい加減に歩きます。そういう感覚的な部分に合う線という意味でも、自由曲線は非常に重要だと最近思います。」
 「海の駅なおしま」は直線的な建物ですが、屋根を支える細い柱やガラスの壁がランダムに配置されているところなどは、この曲線に対するこだわりに似たものを感じます。このこだわりが無かったら、「海の駅なおしま」は、その存在ばかりが目立つ普通の建物だったように思います。

                            参考文献:美術手帳2010年9月号
                                   妹島和世+西沢立衛読本2005

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