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「地球のディテール」三分一博志さんの建築について <瀬戸内国際芸術祭報告8>

投稿日:2010年10月3日 更新日:

犬島 瀬戸内国際芸術祭

犬島 瀬戸内国際芸術祭
犬島の銅精錬所跡:島に残る黒い煉瓦「カラミ煉瓦」は酸化鉄を多く含み非常に熱効率が良いため、美術館内の蓄熱に使われている。

瀬戸内国際芸術祭の会場の一つである犬島にある美術館を設計したのは、1968年生まれの若手建築家、三分一博志(さんぶいち ひろし)さんです。私は犬島を初めて訪れて以来、三分一さんのファンになってしまいました。彼に関する資料が少ないのが残念ですが、入手可能な情報からこの美術館について考えたいと思います。

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犬島は、良質の花崗岩(犬島みかげ)を産出するため、古くから石の産業で有名でした。我が家の近くにある鶴岡八幡宮の大鳥居にも犬島の石が使われています。しかし採石業は次第に衰退します。1990年代には島に地元資本の銅精錬所が開業しますが、銅価格の暴落のため僅か10年で閉鎖、精錬所はその後100年もの間そのまま放置されました。
三分一さんによると、その当時の犬島は「島全体が廃棄物のよう」だったそうです。そこで彼は、その島に捨てられている価値が低いものの性能を徹底的に調べ、そこにあるすべてのものが建材となりうるような美術館をつくりました。廃墟と化した精錬所は美術館に生まれ変わりました。三分一さんは、その美術館について次のように語っています。

 「従来の美術館等では、人が来館すればするほどエネルギーを使い環境を悪化させています。人間は地球を汚す存在として否定されているものでしたが、僕は人間も地球の素材の一つだからととらえて、人が来ればくるほど性能が増していく美術館にしたかったのです。」

この美術館の最大の特徴は、化石燃料を使わず精錬所に残された煙突等を利用して空調をしていることです。太陽熱や地熱によって適温に変化した空気を、煙突で対流させ館内の温度調整をしています。夏は約36度の外気を27度にまで冷やし、冬は約2度から18度まで暖められるそうです。
さらに、「人の排便で植物を育てているので、美術館に人が来ればくるほど植物が繁茂し、シェードが濃くなり、建物内を冷却する性能が増していくように設計されている」ということです。

三分一さんは、彼が理想とする建築のことを「地球のディテール」と表現します。
「僕は植物の根や枝葉のように、地中と地上のバランスを持った建築をイメージするのですが、結局建築をつくるということはその場所の地形、気候に適した固有の植物を追求しているような感じがあります。植物も動物や微生物などを引き寄せてはじめて地球に存在できるように、建築も人・動物が含まれてこそ建築となる。自然エネルギーを利用し、生物と地球上のさまざまな物質の循環の中に知的な形で存在してこそ、建築と言えるのではないかと考えています。」

捨てられて廃墟となっていた犬島の精錬所は、三分一さんのおっしゃる通り、以前からそこに存在する自然の一部のようになった気がしました。美しい建築だと思います。

犬島 瀬戸内国際芸術祭
美術館の増築(?)部分が地上に少しだけ頭を出しています。

犬島 瀬戸内国際芸術祭
島に残された煙突。現在は空調設備として重要な役割を果しています。

参考文献:「PEN」 2009年 11月15日号
「藤森照信 21世紀建築魂」 INAX出版

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