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アートの検閲行為の波紋

投稿日:2010年12月31日 更新日:

 カナダのアーティスト AA Bronson 氏が、先日のスミソニアン学術協会の検閲行為に対して異議を申し立て、自身の作品を問題の展覧会から撤去したい意向を示しているそうです。 
 スミソニアンの検閲行為とは、先日このブログでもお伝えした通り、現在ナショナル・ポートレート・ギャラリーで行われている展覧会””Hide/Seek: Difference and Desire in American Portraiture,”において、アーティストDavid Wojnarowiczのビデオ作品を問題視したキリスト教団体とアメリカ議会のメンバーが同展覧会に抗議し、それをうけてスミソニアンが彼の作品を展覧会から撤去した行為を指します。
 David Wojnarowiczの作品の問題部分には、11分にわたり、キリスト像の上に蟻が這う映像が流されていました。

 AA Bronson 氏は、同性愛をテーマにした現代美術のパイオニアであり、同展覧会にも、巨大なカラー写真を出展していました。 “Felix, June 5, 1994,” と題されたその作品は、エイズの合併症で死亡した彼のパートナーFelix Partzさんの死体がベッドに横たわっているところが撮影されています。
 彼は、”作品の撤去以外に選択肢はない。この展覧会に出展している全てのアーティストも作品を撤収するべきだ。途方もない苦痛に生き、そして死んでいった多くの人間を直に見てきた美術家として、今回のスミソニアンの決断を簡単に受け入れることは出来ない。このようないかがわしい過去を校訂するような行為は、苦痛を与える無礼なことである。”と語っています。

 しかしながら未だに、彼の作品は撤去されないままです。ポートレートギャラリーのスポークスマンは、彼の作品の貸し主であるカナダの国立美術館との借款契約を固守する意向を明らかにしています。

 AA Bronson 氏も言っていることですが、安易にこれを芸術VS宗教の戦いと考えるのは大変危険なことだと思います。それを避けるために、彼は、問題のキリストのイメージに違った角度からの解釈を与えています。”蟻が這っているキリストの映像は、実は、普遍的な苦痛のイメージにぴったりと合っている。”と言っています。受け手によって多様な解釈が出来ること、それはアートにおいて非常に重要なことでしょう。また、彼はその解釈について、”キリスト教徒の正義ほど明白なものではない。”と言っています。明白でないものでも表出する自由があるのがアートなんですね。それは、日常の凝り固まった価値観の中で、私達がしなやかに生きていくことを可能にしてくれると思います。

参考資料
Protesting video’s removal, artist asks Portrait Gallery to take his work out of show
By Blake Gopnik Washington Post Friday, December 17, 2010







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