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「アイ・ウェイウェイは語る」★★★★☆ ”凄い”と表現するくらいしか出来ない、その程合いがリアルだと思います。

投稿日:2011年12月2日 更新日:

アイ・ウェイウェイは語る 
「アイ・ウェイウェイは語る」
 H・U・オブリスト/著 坪内祐三/文 尾方邦雄/訳(みすず書房 2011年11月)
 おススメ度★★★★☆

 アイ・ウェイウェイ氏が今年4月に中国当局に逮捕された時、(6月22日夜に釈放)一部のマスコミからは、”それでも彼は今まで大目に見てもらっていた方だ”という意見が出ていました。
 アイ氏は、2008年に行われた北京オリンピックで、その象徴ともいえるメインスタジアムを設計するという偉業をなしていますし、彼の父親は中国で広く愛されている詩人、艾青(Ai Qing)、母親もまた詩人であり、アイ氏一家は中国では大変有名でした。
 今回の拘束に関しては、彼のこれまでの政治的発言に中国政府が制裁を与えたというのが大方の解釈ですが、それでも、中国で広く親しまれているアイ氏を、政府はある程度黙認していたということのようです。

 しかし、彼は今まで決して幸せな人生を送ってきたわけではありません。
 彼の父、艾青は、今でこそ名誉回復をした中国の文化人ですが、文化大革命では反革命分子の烙印を押され、強烈な批判にさらされて、辺境の地で肉体労働に従事しています。
 当時60歳近かった父親の仕事は、小さな村の公衆便所の汲み取りだったそうです。休みを与えられず毎日働き続けた父親は、ある時体をこわしました。しかし、ユーモアたっぷりの父親は、働きすぎだと医者に言われた時、”人民は糞を垂れるのをやめないものだ。だから私も仕事を休むことはできない。”と笑ったそうです。父親のこの言葉は、アイ氏の話しの中に何回も出てきます。きっと彼の父親像はいつもこの言葉とともにあるのでしょう。
 アイ氏は文革当時を振り返り、”私が受けた唯一の教育は、便所で働く父親の姿を見ることだった”と語っています。
 国全体が一冊の本も持たないように定められた時代に、アイ氏の家族は、面倒なことに巻き込まれるのを恐れ、家にある蔵書をすべて焼いてしまったといいます。アイ氏は子供のころ、本なんて読むものじゃないと言われ育ちました。文革で罰せられた教養人とその家族の境地は、とても理解できるものではありません。
 アイ氏の人格形成には、間違いなく、この時代と父親の存在が大きく影響しています。しかしながら、身の危険も恐れぬ実直さを持つ彼は、中国で同じような体験をしてきた多くの人々の中にあっても稀有な存在なのです。

 この本の帯には、「同時代にこんな凄い人がいたのか!」という、坪内祐三氏によるあとがきの一節が引用されています。”凄い人”とはあまりにありきたりな表現ですが、私は、坪内さんが敢えてこの言葉を選ばれたのだと思っています。
 というのは、アイ・ウェイウェイ氏は、少なくともごく普通の日本人には、非常に捉え難いアーティストだからです。つまり、日本人にとっては、せいぜい”凄い”と表現するくらいしか出来ない、その程合いがリアルだと思うんです。

 彼は、芸術家に備わっている表現の権利や個人の権利を、身を挺して守ろうとしています。そんな彼の存在に私は感動します。しかし、彼の前にあっては、ただただ鈍感化し強張ってしまったとしか感じられない私の精神を、カワイイなんて思っているうちは、アイ・ウェイウェイ氏をもっと知ることは出来ないのでしょう。

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