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「アーティストのためのハンドブック 制作につきまとう不安との付き合い方」★★★☆☆

投稿日:2011年12月5日 更新日:

アーティストのためのハンドブック

「アーティストのためのハンドブック」 制作につきまとう不安との付き合い方」
デイヴィッド・ベイルズ(David Bayles)・テッド・オーランド(Ted Orland)/著
野崎武夫/訳
(フィルムアート社 2011年11月)
おススメ度★★★☆☆

 原文が分かりにくいのか翻訳が悪いのか、少々読みづらいのがこの本の難点です。しかし、本書のような現役のアーティストによって書かれたアーティストの悩み解決本は珍しく、貴重なものと言えます。

 著者は、アーティストがよりよい制作をするためには、彼らが生きてる場所や時間に制限されたまさにその場に立つことが重要であると強調しています。
 彼によると、生活と制作にごく自然な結びつきを見出すことができた時代には、それは意識することではありませんでした。

 アーティストだけでなく誰もが、自分が生まれた場所や時代の文化と深い結びつきがあるということが自明であった時代では、(中略) 美術作品のなかで具体化されている意味や特徴が、日常生活の基本構造の一部となっているために、作品に関する問題とそのほかの問題との距離はそれほど離れていませんでした。すべての人が観客でした。教会の肖像画から自宅の日用品にいたるまで、アーティストがつくる制作物が日常を取り囲んでいました。古代ギリシャの円形闘技場では、約2200年前のエウリピデスの演劇が現代劇として1万4000人の観客の前で上演されていました。いまでは考えられないことです。

  しかし、現代において、アーティストは彼らのいるべき場に留まることを軽視していると著者は言っています。  

 今日アートの問題はアーティストにとってだけの関心事になってしまっていて、より大きなコミュニティーから切り離され、そして無視されています。アーティストは自分の人生と関連がある時間や場所に関わることをためらい、代わりにアートに関する時間と場所に関与するという知的な挑戦を選んでいます。しかしそれはギャラリーの入り口から始まり、そして出口で終わるような、単なる人工的な構成物にすぎません。(中略)ジャーナリストのアダム・ゴプニクは「ニューヨーカー」のなかで次のように述べています。「ポストモダンアートとは、結局のところ、観客不在のアートである」
 このような状況下にいる現代のアーティストは、人間的な帰結をもたらしてくれる材料をみつけようと努力しています。見当違いから生じる差し迫ったプレッシャーがあると、アーティストは、ほかの場所や時代から借用してきた「適当な」もので、キャンバスやモニターを満たしはじめているのかもしれません。それはまるで、作品でありさえすれば主題に普遍性が授けられるかのようなことであり、アートであればすべての物体に自動的に力が備わるかのようなことです。

 既存の何かを流用することは、現在アートの1つの表現として認められていますが、もとをただせば、安易な流用というのは、著者が言うように、表現と生活のぎくしゃくした関係の中で生まれてきたことなのかもしれません。現代のこのような環境下で、アーティストが自分の属する時間や場所に真摯に向き合うことは、非常に難しいことと言えます。
 しかし、この本の著者は、「ギリシャ人の漁師でなければ漁師の帽子を被るべきではない」と言っています。時間や空間を超えて力を借用できるという認識は間違いで、アーティストはあくまでも、彼の生きているところの制限を受けるべきだと言っているのです。

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