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「展示価」で美術作品を見せる ?「美術館・動物園・精神科施設」より

投稿日:2011年12月9日 更新日:

 白川昌生さんによると、もともとはプライベートな閉じた空間として存在していた美術館と動物園、精神科施設は、歴史的にみて同時期に公衆に対して開かれたそうです。また、それぞれの施設の権威者が、弱者を管理・支配し、公衆の敵対心や攻撃性、残忍性を引き出したという構図においても、これらには共通点があると指摘しています。

 たとえば、動物園であれば、動物学者という権威者が飼育係を通して動物を、同様に、精神科施設では、精神科医という権威者が看護師を介して病人を、また、美術館では、美術史家が学芸員を介して作家・作品を管理・支配しているという図式になります。
 このような支配・被支配の関係でいえば、美術作品は多くの場合、既存の美術史的評価や造形的価値によって展示されることになりがちです。そして、そのような一方向的なアプローチは、結局、部分的な歪められた現実を提示することしかありません。
 そこで著者は、そのような既成の判断基準を相対化させるために、「展示価」という考え方を使ってみたらどうかと提案しています。

 「展示価」とは、”鑑賞対象に対する公衆の心理的共感性”と説明されています。つまり、”公衆の受け”を引き上げる価値のことを言っています。動物心理学者のヘーディガーは、動物の「展示価」について大変興味深い指摘をしているそうです。

 ヘーディガーは「展示価」についてすぐれた研究を出している。「展示価」は動物の商業的価値とは無関係であり、ヒトにとっての有用性とも関係がなく、稀少性や学問的価値とはいっそう無関係である。公衆はオカピを年をとったロバと思い、最稀少動物のスマトラ・サイとありふれたアフリカ・サイとの区別をしない。
(「動物園」と精神病院」、『エランベルジュ著作集 2』所収)

 私はこの指摘を意外だと思いました。公衆に受けるのはどのような動物か?などと今まで真剣に考えたことはありませんでしたが、商業的価値や稀少性は、受けるに違いないと思っていました。けれどもよくよく考えると、私は、動物園に行く度に、いつもサルやライオンといった、同じ動物ばかり熱心に見学していたように思います。
 ヘーディガーによると、公衆の好感を呼ぶ天与の何かを持っている動物は、いくつかのグループに分かれ、それぞれはっきりと定義できるそうです。大変おもしろいので、以下の6つのグループ分け、ご覧ください。

1・昔からの伝統的な「エキゾチックな」動物(ゾウ、ラクダ、シマウマなど)
2・(主にネコ科の)、猛獣(ライオン、トラ、ヒョウ)
3・大蛇
4・すばしこくて積極的に動く動物、つまり「芸」をし、おねだりをし、公衆に「合せる」動物
5・動物のコドモなら何でも。それからある動物の小柄な変種(ポニーはふつうの背丈のウマより好かれるだろう)
6・サル、クマ、ペンギン、その他二本脚で立つことのできる動物全部

 著者はこの分類を美術にも応用できるとして、それぞれのグループから連想される美術作品を挙げています。(ご想像ください。敢えて引用はやめます。)

 私は、日本にある美術館が公衆の受けを全くねらっていないとは思いませんが、先のヘーディガーの動物の分類を見ると、”公衆の好感を呼ぶ作品”をもっと徹底的に分析したら面白い展覧会が出来るのではないかと感じました。それは同時に、白川さんのおっしゃる通り、より開かれた美術館を模索する上で有意義なことでもあると思います。

参考文献:美術館・動物園・精神科施設 (水声文庫)

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