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所蔵品の審美性を重視した ケ・ブランリー美術館(Musée du quai Branly)のポストコロニアリズム

投稿日:2011年12月11日 更新日:

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 2006年に開館した、パリのケ・ブランリー美術館について書きます。白川昌生さんの本を読んで興味が湧きました。私はこの美術館に行ったことがありません。

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ケ・ブランリー美術館:ジャン・ヌーヴェル設計

 ケ・ブランリー美術館には、古代から現代に至るヨーロッパ以外の地域の美術品・民具・衣服・装飾品などが収蔵されているそうですが、それらは、もともと、パリの国立アフリカ・オセアニア美術館と人類学博物館に所蔵されていた美術コレクション及び資料だったそうです。
 白川さんは、ケ・ブランリー美術館が設立された経緯について次のように書いています。 

19世紀以降につくられた博物館のほとんどは文明という進化論的思考をその根底にもっており、植民地政策のイデオロギー的な視点、民族学のコンテキストという視点、機能主義的視点等々によってコレクション、展示を作ってきている。
 ところが、1980年代以降になると、ポストコロニアル状況の中で西欧中心主義が批判され、価値観を大きく変換せざるをえないような動きが民族内部で発生し、それがケ・ブランリー美術館の構想へと結実していく。

 ケ・ブランリー美術館は、その前身となる美術館・博物館が設立当初から持っていたイデオロギー的、コンテキスト的、機能主義的視点ではなく、収蔵品自体の純粋な審美性を重視しているそうです。 

 私は、どのような美術館なのか知りたくなり、ネット上の資料をいろいろと見てみました。
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パトリック・ブランによる庭園

 ケ・ブランリー美術館は、コンセプトだけではなく、建物の外観も斬新でした。設計はジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel)。また、植物学者でありアーティストでもあるパトリック・ブラン(Patrick Blanc)による「生きた壁」を建物の外壁に取り入れています。

 美術館の内部は、博物館らしからぬ雰囲気が漂っています。展示品の配置や見せ方が多様で凝っており、所蔵品それぞれの意味ではなく網膜的な要素が重視されているのがよく分かります。そのような展示品を、植民地からの略奪品としてみるのはたいへん難しいように思います。
 過去の暗いイメージを排除した上で、モノを純粋に見ることが出来るようになったことを喜ぶべきなのか、それが忘れ去られるのを食いとめるべきなのか・・?
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まるでファッションショーのよう

 ポストコロニアリズムを意識していると思われるケ・ブランリー美術館のコンセプトについて、白川さんは、次のような問題点をあげています。 

これまでの価値観を放棄し、美術品として展示するということにはポストコロニアリズム、ポストモダニズムの考えが反映されているわけだが、しかしながら、オブジェを美術品と認定する決定権はこれまで同様、西欧側が所有しているということを考えるならば、文化相対主義の限界、矛盾をここに見ることができる。むしろ、文化の主導権をめぐる正統化の闘争ははげしさを増していると言うこともできる。
(・・・)
 歴史的には博物館は民俗学的視点からコレクションをあつかってきているが、それが民族学的コンテキストではなく、美によって組み立てられていく時、脱進化論的、脱西欧主義的な視点が要求されるようになり、ひとつの普遍的尺度が使用されるようになる。その結果、旧来の博物館展示の際にあらわれていた植民地の歴史、イデオロギーが無化されてしまう。ポストコロニアル状況を脱出するためにはこれは有効な方法ではあるが、まさにかつての支配者側にとっても有利な解決方法である。しかし被支配者側にとって、これはどうなのだろうか。政治性を脱色した方法のようにみえて、実は、欧米サイドが国際市場との関係にも配慮しつつ、文化財を一方的に、そしてグローバルに統括しようとする。非常に高度な政治手法ではないだろうか。

 ケ・ブランリー美術館の審美性を重視した収蔵品の扱いは、コロニアリズムを脱却しようとしているのではなく、むしろ隠ぺいしようとしているふうにも捉えることができます。
 結局これらの収蔵品は、戦利品として、それを得た国の根本的なところをつくりあげるのに不可欠なものになっています。それを完全無化することは、ほとんどその国の文化を根底から変えるに等しい。しかしながら、価値感を大きく変えないわけにはいかない現状がある。たいへん根の深い問題だと思います。

参考文献:美術館・動物園・精神科施設 (水声文庫)
Photo:Some rights reserved by dalbera/Lauren Manning

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