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私たちを深く美しくする「なぜ?」という問いを生むアート 長谷川裕子さんの著書から

投稿日:2011年12月15日 更新日:

『「なぜ?」から始める現代アート』
長谷川裕子著 (NHK出版新書 2011年11月)

長谷川裕子さんの『「なぜ?」から始める現代アート』という本を読んでいます。この本の冒頭には、次のような人間の知性の素晴らしさを語った魅力的な一文があります。

私たちは「なぜ?」とか「これは何?」と問うたびに深く美しくなる生き物です。

分からないことを「なぜ?」と考えるのは、ごく自然なことです。でも、一方で、そのように問い続けることを、私たちは、どこか重苦しく考えてしまいがちなのかもしれません。なぜならば、「なぜ?」と問い出したらキリがないほど、私たちの住む世界は不明瞭であるとも言うことができるからです。
長谷川さんは同書の中で、現代に生きる私たちは「なぜ?」という問いを生まない環境に暮らしていると言っています。

現在は、シンクロニシティ(共時性、共感覚)の時代といわれています。・・・それを促進したのは20世紀の偉大な発明である写真、映画、テレビなのですが、視覚情報はこの世紀に飛躍的に広がりました。・・・「メディア」の時代は視覚情報の時代といってもよいほどです。
そのこと自体は私たちの受容能力の拡張―新たな知覚形式の獲得としてよいことではあったのですが、ここで困ったことが起こったのです。自分がそこにいなくても見ることのできる間接的な感覚情報があまりに増えたために、自分の身体との関係が希薄になってしまい、視覚体験を自分の心の深いところ、生の意味を問う領域までかかわらせることが難しくなってしまいました。
つまり周囲にある多くの視覚体験は、「なぜ?」を生まなくなってしまったのです。

この部分を読んで、私は、自分が現在抱えている「なぜ?」をまさに自分の身体で考えているだろうか?自分の深い部分でその問題を捉えているだろうか?と考え込んでしまいました。そして、長谷川さんの考えるアートの定義から、こんなふうに真剣に「なぜ?」を求めようとしている私だから、アートが大事なんだと思い至りました。

彼女にとってアートとは、先のような”(視覚体験を心の深いところにかかわらせることが難しくなってしまった)状況に抵抗し、「なぜ」の発生をうながす存在”です。

では、「なぜ?」を全く必要ないと考える人にとっては、アートも必要ないということでしょうか?私はそうだろうと思います。







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