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「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」展

投稿日:2011年12月26日 更新日:

ここが家だ
「ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸」アーサー・ビナード著(集英社2006年)
神奈川県立近代美術館(葉山)で行われている「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」では、ベン・シャーンによる絵画や写真、版画、グラフィック・アートなど様々な表現形態の作品が紹介されています。今日は彼の写真について書きます。

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シャーンにとっての写真のポジションは、あくまでも絵を描くための道具(スケッチブック?)のようなものであると思われます。展示されている絵画の多くは、写真をもとに制作されています。
しかしそのような写真の使い方とは別に、彼は、1930年代にはアメリカのRA/FSA(再定住局/農村安定局)というところで、写真を使った仕事をしていました。

RA/FSAとは、フランクリン・ルーズヴェルト大統領のニューディール政策の一環として設置された部局です。1929年のニューヨーク・ウォール街の株価暴落に端を発する景気の大幅後退は、偶然に起こった異常気象を伴ない、農村を危機的な状況に陥れました。RA/FSAは、その際に土地を失った農民の再定住を促進する役割を持っていました。
しかし、個人が自分の力で土地を開墾してきた歴史を持つアメリカにおいて、政府が農民の再定住先にまで介入するこのような政策は馴染み難いものだったそうです。そのためRA/FSAは、過酷な農民の暮らしを議会や報道機関に伝えるため、ドキュメンタリ―写真を制作しました。シャーンは3年かけてアメリカの南部や中西部の農村を回り、現地の実態を記録しました。
この時シャーンは、その後に彼の作品の中核を占める大事なことに気付いたそうです。

当時私はアメリカの国内のいたるところを歩き廻り、あらゆる種類の宗教や気質をもった多くの民衆を知るようになった。こういう信仰や気質を彼らはその生活の運命に超越し、無関係にもち続けているのだった。社会的な「理論」はかかる経験の前に崩れ去った

ベン・シャーンは、常に社会的弱者を作品の中に取り上げてきました。それは、彼自身が貧しいユダヤ系移民であったことと無関係ではないでしょう。しかし彼は、このRA/FSAでの仕事を通じて、彼らをユダヤ人や移民、労働者などと一括りに捉えてきたそれまでの自身の表現を反省したそうです。人間を個人として捉えなければ、何か大事な取りこぼしをしてしまうと思うようになりました。

このベン・シャーンの考え方は後の彼の作品のよくあらわれています。今回の展覧会では、「ラッキードラゴン」シリーズが展示されていますが、これは1954年に起こった第五福竜丸事件を題材にしています。第五福竜丸の船員は、ビキニ環礁付近でアメリカの原水爆実験に遭遇しました。シャーンの「ラッキードラゴン」シリーズに描かれた船員が、私にとって身近な人であるかのように強いインパクトで訴えかけてくるのは、先のシャーンの人間をひとりの個人として表現する姿勢が大きく影響しているように思います。

芸術新潮 2012年 01月号 [雑誌]?参考:芸術新潮 2012年1月号

「ベンシャーン クロスメディア・アーティスト」展
2012年1月29日(日)まで 月曜日休館
開館時間 9:30?17:00
神奈川県立近代美術館 葉山 にて

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