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オノ・ヨーコ展「灯 あかり」

投稿日:2012年1月8日 更新日:

昨日、オノ・ヨーコ展 「灯 あかり」小山登美夫ギャラリーにて)を見てきました。

オノ・ヨーコさんの活動は、一貫して平和や愛・自由をテーマとし、人類の明るい未来に向けて発せられているように思います。今回の展覧会においても、彼女のそのような側面はよくあらわれています。
オノさんは同展の展示について、「震災を受けた日本に灯をもたらすような」作品をつくったと説明しています。会場は6F・7Fと2フロアーに分かれていましたが、大変印象的だった7Fの方の作品の説明をしながら、私の感じたことを書きたいと思います。

 

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私は、同ギャラリーには何度か足を運んだことがあります。今回も、ギャラリーに繋がるエレベーターに乗り、7Fで降りました。しかし、そこは、照明に照らされたいつものギャラリーではなく、目の前に広がるのは完全な暗闇でした。会場の入口に案内係の女性が立っていることも、目が慣れるまではまったく分かりません。女性の説明に従って、まず入口脇で靴を脱ぎ、持っている荷物をすべて預けます。そして、小さなペンライトを1つ渡されて会場に入りました。

内部は、弾力性のあるやわらかい網によって、人ひとりがぎりぎり通れるほどの幅の狭い通路がつくられています。あたりはほぼ真っ暗なうえに、手元にあるペンライトもごく近くしか照らすことができないため、その通路がどのように伸びているのか、私にはまったく分かりません。道が開かれている方向を手探りしながら、そして、時には網の壁に体当たりしながら、不安な道のりを、なんとか少しずつ前に進んでいきます。

しばらくすると、暗闇の先に何か白い物体がかすかに浮かんできました。近寄ると、それはアクリル(?)でつくられた無色透明の人型オブジェであることが分かります。網の外側に置かれたそのオブジェは、どこからか届くわずかな光を浴びて、自身も発光しているようにも見えます。そして、そのまわりには、白い塊のようなものがところどころに置かれています。人型とは言っても、そのカタチは実際の人間とは大きくかけ離れた実に単純なもので、身長もおよそ1メートル程度と小ぶりです。そのため、人間というよりは未知の生物のように思えます。
しかしその一方で、彼らは私に対してとても友好的であるようです。なぜなら、実におおらかにその姿を私の前にさらしているからです。あるところにはひとりでぽつんと、またあるところには数人が一緒になってこちらの様子を伺っているように見えます。
あとで分かったことですが、このオブジェは「ミエナイ人タチ」と名づけられています。今回の展示が震災に向けられたものであることを考えると、もしかすると彼らは「被災地で見えなくなった方たち」なのかもしれません。人は、亡くなり土に還ったとしても、残された者の中に記憶として生き続けます。記憶の中に生きる彼らの視線を感じながら私たちは日々暮らしています。オノさんのヒューマンな部分を感じる、温かいイメージを持ったオブジェだと思います。

人型オブジェが浮かぶ空間を後にした私は、ふたたび暗闇のなかを進みます。しばらくすると、この迷路の中心部とおぼしき場所にたどり着きました。そこには、それまで私を取り巻いていた暗闇からは想像がつかないほどの強烈な光源がありました。真っ暗だと思っていた迷路の中に、そのような眩しい光が存在するとは、驚きでした。そのライトは天に向けて発せられているために、ダイレクトに暗闇を破ることはありません。しかしそこには間違いなく強い光が存在しています。絶望的な暗闇の中にあっても希望の光はこのように力強く存在する、オノさんがそう言っているように私には思えます。それはまだ絶望を圧倒する力にはなり得ません。しかし、間違いなくそこに存在しているのです。

私はいま、自宅でこのブログを書いています。いつも通りの平和な生活。3.11の震災は、被災地の方々のそうした日常を奪い去りました。私の夫の田舎が福島にありますが、親戚は今もそこで暮らしています。オノさんは、3.11の震災がもたらした絶望の中にも、あの会場の光源のようにひっそりとではあるけれども力強い希望の光が存在すると言っているように感じます。そしてそれは、今回の展覧会で彼女が一番伝えたかったメッセージであろうと思います。

最後に、この展覧会の中で私が一番気になったことを書きます。それは、人型オブジェと「白い塊のようなもの」が配置された空間で作品を鑑賞した時のことです。床に配置され静止していると思っていた「白い塊のようなもの」のうち、なぜか2つだけが動いています。興味をひかれた私は、暗闇の中、さらに目を凝らしました。次第にその周囲のものがおぼろげに見えてきます。すると、そこには黒い服を着た女性が1人立っていて、その動く物体はその女性が履いている靴であることが分かりました。私は当然のことながらこの女性もオノさんの作品の一部と捉え、そして、オノさんが意図するところを考えました。けれども、まったく分かりません。仕方なくその場を離れた後も、白い靴を履いたその人物のことが気になっていました。
作品を最後まで見ても、彼女がそこに立っている意味をまったく掴めなかった私は、思い切って彼女に話しかけてみました。すると意外なことが分かりました。実は、彼女は会場の監視員だというのです。そして、白い靴に見えていたものは靴に巻かれた布であるようでした。土足禁止の会場内を靴で歩くために巻いていたのかもしれません。私はものすごく戸惑いました。暗闇の中、床に配置された白い作品のすぐ脇に立つ、白い布を巻いた靴を履く監視員。なんだろうこれは(?)。意図があるのかもしれません。でも、もしギャラリーの独断でこういう形で監視員を配置しているのであれば、そのセンスを疑ってしまいます。作品の一部でないのであれば、監視員の配置を考え直したほうがいいように思います。

オノ・ヨーコ 展 「灯 あかり」
2012年1月28日(土)まで
12:00−19:00 (火−土曜日)? 休廊日日・月曜日、祝日
小山登美夫ギャラリー東京 7F・6F にて

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