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コンクリート製「トリュフ」に暮らす(建築家:アントン・ガルシア=アブリル)

投稿日:2012年1月20日 更新日:

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天然の岩の内部をくりぬき、そこに窓を設置したかのような構造物。これは、アントン・ガルシア=アブリル(Anton García-Abril)というスペインの建築家がつくった「トリュフ(La Trufa)」という作品です。
その名の通り、外見は収穫したての白トリュフになんとなく似ています。表面の不揃いな凹凸(おうとつ)には土が付着しており、その様子からは、この構造物が土の中で育ったような趣が感じられます。

「トリュフ」というタイトル、そしてその外見からだけでも、多くのことを想像させてくれるガルシア=アブリルの作品ですが、それだけで済ませてしまっては余りにもったいない。彼の「トリュフ」を理解するには不十分と言えます。なぜなら「トリュフ」が育つ過程もこの作品の一部であり、その過程にこそガルシア=アブリルのこだわりが強く感じられるからです。

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(施工過程の冒頭部分のみをコチラの映像でご覧いただけます。)

大西洋を見下ろす丘の上に、「トリュフ」を仕込むための穴を掘ります。深さは人間の身長ぐらい、2m弱程度でしょうか。また、その大きさは「トリュフ」の底部がすっぽりと入るくらい。直径は10mに満たないと思われます。その穴にコンクリートを浅く流し込んで、「トリュフ」の床になる部分をつくります。

次にそのコンクリートの床の上に、ブロック状のワラを配置していきます。ワラのサイズはそれほど大きくはありません。女性の私でも頑張れば担げる程度です。そのワラを生乾きのコンクリートの上に次々と置いていきます。と言っても、穴の中に目一杯敷き詰めるのではなく、周りの土壁との間に1mから2m程度の距離を開けて配置します。一旦ワラを置き終わったら、ワラと土壁との隙間にコンクリートを流し込みます。それが終わると、先ほど配置したワラの上にさらにワラを配置。2mの穴がワラとコンクリートで満たされると、盛土をして、土壁をさらに上部へと伸ばします。そして、ワラ、コンクリート、盛土の繰り返し。この作業によって、ワラの詰まった内部空間とコンクリートの壁をつくっていきます。
壁と内部空間が出来たら、今度は屋根です。積み上げたワラの上にビニールシートをかぶせ、その上からもコンクリートを流します。最後に土を被せると、はい、丘の上に土の山ができました。中にはコンクリートでできた「トリュフ」が眠っています。

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コンクリートが固まったら、いよいよ「トリュフ」を掘り起こします。ショベルカーによって周囲の土が取り除かれ、歪(いびつ)な姿をさらす白トリュフ。全く「人の住まい」には見えません。これを人の住まいにするためには、まずは中のワラを取り除く必要があります。側面2ヶ所を機械で1m程度切断し、内部のワラをあらわにします。

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ここで、パウリナ(Paulina)という一頭の牛が登場します。実は彼女(雌牛だそうです)は今回の施工担当のひとりなのです。彼女に与えられた仕事は、コンクリートの中のワラを食べ尽くすこと。「トリュフ」は、彼女がその仕事を終えるまで彼女自身の住まいとなります。

ここからあとの過程については、ガルシア=アブリルはまったく説明していません。建具をつけたり水回りの設備を入れたりなどの作業は、おそらく彼にとっては二次的なことであり、また鑑賞者のだれもが想像できることだからでしょう。

ガルシア=アブリルは、自らの建築が、その施工過程において、人の手によらずに偶発的に変化していくことを楽しんでいるようです。彼のそのような感性から生まれたこの建築物は、いわば、自然と人間の共同作業によって成り立っています。私が思うに、この建築物の醍醐味は、「トリュフ」が創出されるまでのストーリーとともに、施工時に偶然できた痕跡を、住まいながらじっくりと味わうことにあります。

牛のパウリナが登場する場面は、彼のストーリーの中で最ものどかで詩的な趣のあるところであり、また、建築の施工過程としては最も斬新な部分です。そのため、他の部分から少々浮いている印象も受けますが、同時に、それでもあえて加えたいという彼の強い意思も感じられます。

パウリナが作業を進める速度は極めて緩やかです。そのためガルシア=アブリルは、ワラを除去するために1年もの時間を費やしています。他にいくらでも効率のよい除去方法を考えだせたはずですが、とても効率の悪いこのやり方を彼は意図的に選択しています。ガルシア=アブリルはなぜこのような過程を入れたのでしょうか。私の推測では、彼は、トリュフが土の中で育つようなゆったりとした時間の流れを、「牛」と「ワラ」という2つの素材を用いることにより作り出したかったのだと思います。

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↑清潔感のある「トリュフ」の内部

このように「牛」と「ワラ」は時間の表現であると考えたときに、私には少々残念だと思うことがあります。それは、完成した構造物には、彼のこだわりが十分に反映されていないということです。出来上がった構造物の内部には、牛が残した痕跡と思えるものを見つけることができません。パウリナが食んだワラの残骸は見事にすべて除去され、内部の壁や床は現代人が住まうに適したふうにピカピカに掃除されています。もちろん、そこが約1年の間彼女の住まい兼食料庫であったという面影もありません。これらの要素を排除した結果、現代人にとっての居心地の良さが実現しました。しかしそれに反して、彼が目指していると思われる自然と人間のコラボがいまひとつ見えにくくなってしまったように思います。彼の自由な発想は、「現代人が住まうのにふさわしい清潔な空間」に大人しくおさめられてしまったのではないか、そう感じます。私は、あの空間の中にパウリナの存在を何らかのカタチで残すべきだったと思います。

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↑ 整えられる前の内部の様子。パウリナがまだ居そうな雰囲気がある。

建築、アートがつくりだす新しい環境―これからの“感じ”
2011年10月29日(土)‐2012年1月15日(日)

休館日:月曜日(ただし1/2、1/9は開館)、年末年始(12/29から1/1)、1/4、1/10

開館時間:10:00〜18:00
東京都現代美術館にて

画像引用元 dezeen

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