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ロッククライマーがつくる彫刻  ダグ+マイク・スターンの「ビッグ・バンブー」

投稿日:2012年3月11日 更新日:

Big Bambú

写真をご覧ください。木材を積み上げてつくられた、巨大な鳥の巣のような構造物。決して頑丈には見えないその構造物の上で、数人の人間が何か作業をしています。目を凝らすと、彼らは、その構造物をさらに左上空へと伸ばそうとしているようにも見えます。しかし、それもそろそろ限界のようです。上部の木材は、すでに強度を保つことができず、しなり始めています。

この不思議な構造物は、双子の兄弟、ダグさんとマイクさんによるアーティストユニット、ダグ+マイク・スターン(Doug+Mike Starn )の「ビッグ・バンブー(Big Bambú )」という作品の一部分です。

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「ビッグ・バンブー」は、ごく普通の建築のように、設計図に基づいて計画的につくられるものではありません。数千本の竹とナイロン製の紐のみを材料とし、それらをその都度つなぎ合わせているだけなのです。さらに驚くことに、作業にあたっているのは、建築とも、あるいはアートともおよそ関係がないと思われる、プロのロッククライマーであるとのことです。
また、「ビッグ・バンブー」には、制作途中や出来上がりがありません。限られた期間のことではありますが、それは、常に変化するものであると同時に、作品として完全な姿なのです。

スターン兄弟は、「ビッグ・バンブー」を彫刻であると言っています。彫刻とは言っても、それは、一般的に私たちがイメージするものとは異なり、常に動き続ける、あまりにも大きい彫刻です。

「私たちがこの巨大な作品を制作した理由は、人間である私たちの小ささを浮き彫りにするためなのです。少なくとも、私たち一人ひとりはそれほど大きくはありません。私たちは、鑑賞者にその事実に気付いてほしいのです。いったん自己の小ささを認めると、自分たちが、とてつもなく大きいものの一部であるという事実に思い至ることでしょう。」

彼らがこの作品で表現した、「とてつもなく大きいもの」とは、様々な生命の集合体としてのこの世の姿、あるいは、それらが生み出す社会や歴史をも含んだものであるように思います。
私たちは、ふとした時に、自らの存在の小ささを思い知らされます。例えば、人間の力が到底及ばない自然の猛威に打ちのめされた時。そのような時、私たちは、短くささやかな人生において、本当に大切なものとは何だろうと考えるのだと思います。
しかし、そのような思いも長くは続きません。すぐに風化してしまいます。私たちは、経験から学び得た思いを、常に人生に生かしていけるほど利口ではないのかもしれません。
そうであるならば、常日頃から、「私たちの存在の小ささ」を想起できるような仕掛けをつくっておくべきでしょう。例えばスターン兄弟による「ビッグ・バンブー」のような。

ところで、下の写真は、巨大な倉庫の中で制作された「ビッグ・バンブー」です。この写真からは、この作品がどのような過程を経てつくられるのかを知ることができます。

Big Bambú6

Big Bambú 5

竹を積み上げて上方に高さを延ばし、それが限界に達した時、「ビッグ・バンブー」は、一転して下降しはじめます。過去につなぎ合わされた竹は古い箇所から順に解体され、構造物の新たな細胞に生まれ変わります。上昇と下降、そしてまた上昇。それはまるで巨大な波のように変化していきます。

一方、冒頭で紹介した写真は、この倉庫で制作された「ビッグ・バンブー」が、2010年にアメリカのメトロポリタンミュージアムで発表された時の様子を収めたものです。残念なことに、その作品からは、「ビッグ・バンブー」が本来持つダイナミックな動きを知ることができません。

冒頭の写真には、高さが限界に達した時の「ビッグ・バンブー」が写し出されていますが、実はこのあと、それは動きを止めてしまい、波のように上昇と下降を繰り返すことはありませんでした。最終的には15メートルにも及ぶ巨大な有機体が表現されたにも関わらず、それは同時に、窮屈な檻の中に閉じ込められているようだと私は思います。この写真からは、それがよく分かります。美術館内という限られた制作スペースが、「ビッグ・バンブー」の自由な動きを阻止してしまった。私にはそのように見えます。
しかし、スターン兄弟は、敢えてそのような場所で「ビッグ・バンブー」を制作したとも考えられます。都会のコンクリートジャングルの中で、ところ狭しとくすぶり続ける巨大な有機体、彼らの中にはそのような「ビッグ・バンブー」のイメージがあったのかもしれません。

Big Bambú 1

Big Bambú 3
↓ 「ビッグ・バンブー」の中の歩道をあるき、美術館に突如出現した竹のジャングルを体験することもできます。
Big Bambú 4
↓ メトロポリタンミュージアムでの制作の様子がよく分かります。

(追記)

ダグ+マイク・スターン(Doug+Mike Starn)は、1978年あたりから現代アートシーンにおいて世界的に注目されるようになりました。現在も高い評価を得ており、彼らの作品は、世界各地の著名な美術館や画廊に収蔵されています。彼らが評価される点の一つとして、既存のアートのカテゴリーにとらわれない幅広い表現方法が挙げられます。

例えば、彼らの代表作に、わざとボロボロにした紙やガラスなど様々な素材を感光させ、それらを繋ぎあわせて一枚の大きな写真にした作品があります。独特のコンセプトと斬新な写真技術を用いて制作されたこの作品は、彫刻のようでもあり、また絵画のようでもあり、写真の新しい概念を提示したと言えます。

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