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ジャクソン・ポロックが求めた女性のイメージ 

投稿日:2012年4月11日 更新日:

spollock
ジャクソン・ポロック 無題 (1930年代)
ポロックは、自分の母親を「子宮を内臓した古い墓穴」と表現したことがあるそうだ。この作品には、彼が持っていた母に対するイメージがよくあらわれている。

ジャクソン・ポロックは20代の頃からアルコール依存症を患っており、精神科で治療を受けていました。当時彼の精神分析にあたった精神科医、ジョセフ・L・ヘンダーソンは、後に、患者ポロックの短い生涯を次のように記しています。

 この患者は幼児期における情緒的な欠損からかなりの孤立に悩んでいた。しかも、これがまだ十分には補償されてはいなかった。
患者は、自分より年上の同情的な女性の友人との密接な関係によって、これを補償し始めようとしていた。そして、自分に対する彼女の関心を確信するようになった。ところが不幸なことに、患者が実際に新しい状況での安定を十分に確信しない前に、この女性は死んでしまった。
しかしながら、明らかに患者は自我を強化し、新しい方向で生活を始めるようになり、職業にも成功を収めていた。患者は結婚し、自分の生活の個人的な感情のレベルでかなり適応していたように思われる。

私はこの患者にその後会わなかったが、およそ十五年経過して、その間にアルコール中毒も加わって精神的な混乱の時期を経て、新しい退行状態に陥り、仕事をする能力も失い、ついに否定的な性格に変わり、死を迎えたということである。

ヘンダーソンは、「年上の同情的な女性」がポロックに与えた影響の大きさを強調しています。その女性は、ポロックの恋人でも奥さんでもない人でした。
「ジャクソン・ポロック」の著者、藤枝晃雄氏によれば、彼女はヘレン・マロットといい、ポロックがかつて生活のため守衛をしていた中学校の教師だったそうです。彼女はポロックにとって母親のような存在でした。

ポロックの実母は、伝えるところによれば、独善的で抑圧的な人物であり、近寄りがたい印象をまわりの人に与えていたそうです。ポロックは、そのような支配的な母に打ちのめされた父のようにはなりたくない、との思いを常に抱えていました。
この母親に対する情緒的欠損を補うかのように、ポロックの絵には、時に女性のイメージへの渇望が表れている。ヘンダーソンはそう感知していました。

ヘンダーソンが言う通り、ポロックを生来の疎外感から救いだしたものが、彼に深い同情心を寄せる女性の存在であったとすれば、一方で、ポロックの生命に最後の一撃を加えたのは、そのような存在の喪失であったと言えるのかもしれません。ポロックにとって、妻のリー・クライズナーもまた、マロットと同じような存在ではなかったかと私は思います。
ポロックが、後に自殺と判断された自動車事故を引き起こし44歳の若さでこの世を去った時、妻のリークライズナーは、ポロックを捨てヨーロッパへと旅立っていました。彼女はその時、ポロックへの気遣いをきっぱりとやめる決断をしたのです。

ポロックは、アメリカが誇るスター的芸術家としてその名を遺しました。しかし彼がその短い生涯の中で本当に求めていたものは、実はとても素朴なものだったのかもしれません。それは、彼を落ち着かせてくれる女性の存在であったと私は思います。ポロックの場合、それが露骨過ぎるほどストレートに見えてくる。彼の心の渇きがいかほどのものなのかが伝わってくるようです。

参考文献:「ジャクソン・ポロック」 藤枝晃雄 著
「ジャクソン・ポロックとリー・クライズナー」
イネス・ジャネット・エンゲルマン 著

画像引用元:Wahoo Art

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