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イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに

投稿日:2012年4月13日 更新日:

sLee Bul
イ・ブルの初期の作品(パフォーマンス)。草間弥生の作品に似た(?)コスチュームを着ている。

 森美術館で開催されている「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」を見てきました。
 開館直後なのに、チケット売り場にはたくさんの人。イ・ブルはそれほど知られていないはずだけど、韓国のアーティストだから韓国ファンが見に来ているのかしら?なんて考えていたら、なんてことはない。大半の人達が、美術館のとなりで開催されている「ONE PIECE展」を見にきていたんです。「イ・ブル展」はガラガラでした。予想通り。たくさんの来場者を見込めなくても、若手アーティストをどんどん紹介してくださる森美術館に感謝です。

 さて、イ・ブルは1964年ソウル生まれ。今回の展覧会は、彼女の20年間の作品を時系列で紹介しています。

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 もっとも興味深かったのは、20年という短い?制作期間の中にも様々な試みがあり、作品の大きな変化が見られるところでしょうか。もちろんそこからは、彼女の一貫した興味が見えてくるわけですが、そのテーマの表現の仕方に、彼女なりの模索が感じられます。(彼女の作品のテーマについては後日書きます。)

 イ・ブルの制作スタイルは、大きくわけて2つの時期に分けられるように思います。1つは、最初期および現在。もう1つは、その間の時期。現在の彼女は、初期のころの価値観に再び立ち戻っていることが分かります。

 イ・ブルはもともと、個人としての彼女自身から湧き出たイメージを大切にする作家でした。それは最初期の作品によく表れています。
 実は、この頃のイ・ブルの作品は、草間彌生の作品にとてもよく似ています。布とワタでつくられた、まるで人体の奇形を思わせるいびつな形をした突起状のもの。そんな草間のオブジェに通じる形状が作品を覆っています。「モンスター」と題されたその作品は、時にイ・ブルのパフォーマンス用衣装となり、また彫刻にもなるのです。
 
 この網膜的で分かりやすい「モンスター」のような作品を制作した時期を経て、イ・ブルは、今度は逆に、言葉で説明を補足しなければ解読できない、分かりにくい作品をつくるようになります。こういった作品のことを、「ローコンテクスト」というのでしょう。(村上隆さんがおっしゃる「ハイコンテクスト」は、「ローコンテクスト」の間違いではないか?と私は思っています。)
 イ・ブルは、タイトルに複数の意味を含ませたり、多くの人が解読できないであろう文字(エスペラント語)を敢えて作品に使用したりしています。また、既存の建築家や小説家の作品の引用なども積極的に行っています。

 おそらく、最初期のストレートな作品の方が、観客に広く好まれるのでしょう。しかし、私は、このローコンテクストな時期の謎解きのような彼女の作品も結構楽しいと思いました。
 なぜ、彼女がこのような表現方法の変革を行ったのか?それは彼女が(西欧)美術史における自身のポジションを意識したためではないかと、私は勝手に思っています。彼女は、現代アートシーンにおける大舞台に向けて、斬新な「彫刻」としての作品を提示しようと考えていた。そこには彼女のアーティストとしての野心が見えると私は思います。

 しかし、このような時期を経て、イ・ブルは再び個人的なこだわりに立ち戻ります。彼女は、こんなことを言っています。 

個人を排除した社会などありえないように、アーティストが作品をつくるときに個人的なものからつくるということはごく当然のことだと思います。

 彼女の制作活動の核となる現在のこのような考えは、展覧会のタイトル「私からあなたへ、私たちだけに」からもうかがい知ることができます。アーティストとして抱いた立志の先に、何か重要なものを忘れてきた。イ・ブルは、そんなふうに思ったのでしょうか。

テキスト引用元:美術手帖 2012年 04月号
画像引用元:Sorry for suffering – You think I’m a puppy on a picnic?

「イ・ブル展:私からあなたへ、私たちだけに」
?アジアを代表する韓国女性アーティスト、初の大規模個展
2012年2月4日(土)?5月27日(日)
森美術館にて

こちらも楽しみです。合わせてどうぞ。
「草間彌生 永遠の永遠の永遠」
2012年4月14日(土)?5月20日(日)
埼玉県立近代美術館にて

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