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飛行機が飛び交う部屋 さわひらきの「dwelling」

投稿日:2012年4月22日 更新日:


「住居(dwelling)」(2002年)

 「住居(dwelling)」と題された映像をご覧ください。これはイギリス在住の日本人アーティスト、さわひらき(1977年?)がつくった作品です。


だれもいない部屋の中に、なぜかたくさんの飛行機が飛んでいます。しーんと静まり返った部屋の中には、時折、飛行機のエンジンの音が響いています。模型
と思われるほどの小さな飛行機ですが、よく見ると私たちが利用している本物の飛行機のようにも思えます。そのため、飛行機が小さいのではなく、部屋のパー
ツが巨大につくられているのかと錯覚します。
 初めは、部屋の内部と飛行機という突飛な組み合わせに違和感を感じるのですが、次第にさわの世界に
馴染んでくると、不思議なものです。なぜか、「だれもいない部屋に飛行機が飛ばないとは限らない。」と思うようになり、揚句の果てには、「飛行機が飛んで
いることもあるかもしれない。」という感じを抱くようになります。
 ごく常識的に考えると、飛行機が部屋の中に飛んでいるはずはありません。しかし、私たちがそのように捉えている「現実」は、実はそれほど明瞭ではない。さわはそう言っているように思います。

 
この作品のように、通常はありえないような不思議な世界を映像化するようになった背景には、高校卒業後に日本を去り、イギリスにおいて作家活動を展開して
きた彼の経歴が影響しているようです。さわは、日本にもイギリスにも属さない彼自身の存在のおぼつかなさを「宙ぶらりんな現状」と表現しています。以下、
さわ自身の言葉を引用します。

 イギリスに来て何年経っても部外者という意識があって、常にこの国を傍観している客観的な自分がいます。でもそれでいて、僕の母国である日本の何かを表現するには経験が無さすぎるし、そもそも僕の表現したいものの出発点がそこにあったわけでもないんです。この宙ぶらりんな現状を無意識に補おうとしているのか、たぶん僕は、自分の手の届く範囲にある、存在はしているんだけどどこか曖昧なこの現実を形にしようとしているのかもしれません。ただでさえ曖昧な現実をさらに曖昧にすることで、見えるかもしれない現実を表そうとしているとでもいうのか……。

 先の映像に写し出された部屋は、おそらく、さわ自身の住まいなのでしょう。曖昧な現実の中にあって、その部屋は、彼にとって多少なりとも堅固な実体を伴なう稀有な場所なのかもしれません。しかしながら、彼は敢えてその場を曖昧なイメージへと変換するのです。
 一方、私自身の日常生活を振り返ってみると、「現実」とは曖昧なものであるどころか、むしろ、確かなものでなくては困るとの思い込みをもとに展開しているように思えます。さわの作品は、この私の偏狭な「現実」の捉え方を、解きほぐしてくれるようです。

テキスト引用元:Art It さわひらきインタビュー

さわひらき 「追伸」

2012年4月10日?5月26日
OTA FINE ARTS にて
※「dwelling」他、初期作品を5点を展示。

さわひらき「Lineament」

2012年4月7日?6月17日

銀座 資生堂ギャラリー にて
※新作「Lineament」他5点を展示。

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