やまでら くみこ のレシピ

簡単料理の作り方や話題の人気レシピなどを紹介。

Chim↑Pom(チン・ポム)による、「原爆の図」へのオマージュ

投稿日:2012年4月26日 更新日:

先日ワタリウム美術館で行われている「ひっくりかえる展」を見てきました。そこで紹介されている9組のアーティストのうち、ヴォイナの活動については、すでにこのブログにも書きました。
社会をアートの力によってひっくりかえそうと考えている、この9組のアーティストの作品は、必然的に奇抜さとなってあらわれているように思います。たいへん興味深い展覧会でした。是非ご覧ください。

sgennbakunozu
Chim↑Pomによるインスタレーション


さて、その中でも私が最も印象に残ったのは、展覧会入口を入ったところに展示されている古びた木箱を使ったインスタレーションです。
この作品は、原爆が投下された広島の本当の姿を人々に伝えようと、「原爆の図」を描き、日本各地でその絵を披露した丸木位里・俊夫妻の活動を、アーティストのChim↑Pom(チン・ポム)がインスタレーション作品におこしたものです。

インスタレーションは、「原爆の図」とともに丸木夫妻が各地を巡回している様子が撮影された映像と、Chim↑Pomによるテキスト、そして古い木箱から成り立っています。
この木箱は、丸木夫妻が「原爆の図」を収納し、持ち運んだ入れ物です。「原爆の図」はもともと巻物のようにつくられており、この箱の中にコンパクトに収めることができます。では、なぜ巻物のようにつくられたのか。Chim↑Pomの説明によれば、それは、移動しやすさを追求した形状であり、必要にせまられた場合に素早く撤去できる仕組みであったということです。当時は、GHQによるプレスコードによって戦後の報道規制がなされていた時代です。原爆に関する言論統制も当然のことながら行われていました。アートはその規制対象外であったそうですが、展覧会の開催が妨害される可能性を十分想定した上での対策なのでしょう。

ところで、なぜアートが規制対象外だったのでしょうか。アートは社会を揺り動かす力とはなりえないと考えられていたのでしょうか。確かに、アートには、言
葉が持っているような瞬発的な効果はないかもしれません。しかし、当時、ひそかに日本全国を巡回した丸木夫妻の展覧会は、人づてにその評判が広まり、時に
は1か所で1万人もの観客を集めたのです。

丸木夫妻の活動をインスタレーションとして再提示したChim↑Pomのアイデアは素晴らしい。この作品は、単に原爆の問題にとどまらず、アートが社会においてどのようなアクションを起こせるのか、私たちの記憶に食い込むような形で問題提示をしています。見事だと思います。

画像引用元:丸木美術館学芸員日誌

「ひっくりかえる展」
2012年4月1日?7月8日
ワタリウム美術館にて

おすすめ記事

ジャクソン・ポロックのドリッピングを科学する。

ジャクソン・ポロックが描いた「ドリップ・ペインティング」は、一見、子供…

村上隆のゲルニカ。「五百羅漢図」

村上隆さんの大規模な回顧展「Murakami-Ego」が、2月9日から…

Anton Garcia Abril:スペインの現代アート、コンクリート製「トリュフ」

天然の岩の内部をくりぬき、そこに窓を設置したかのような構造物。これは、…

ロッククライマーがつくる彫刻  ダグ+マイク・スターンの「ビッグ・バンブー」

写真をご覧ください。木材を積み上げてつくられた、巨大な鳥の巣のような構…

音が描く模様。聞こえない音の視覚的な美しさ by カールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)

子どもの頃、私は、雷が大嫌いでした。降りしきる雨の中、突然に光る空、そ…

セザンヌの絵が解き明かす、現代の脳科学

画家セザンヌが生きた19世紀、人間の感覚は、外の世界のありのままの姿を…

刺青から紐解く炭鉱夫の恐怖。山本作兵衛の世界

2011年5月、画家山本作兵衛の絵が、日本で初めて世界記憶遺産に登録さ…

地中美術館の「モネの一室」が素晴らしい。オランジュリー美術館との比較。

「睡蓮」によって大装飾空間をつくり出す。晩年のモネのそうした構想をもと…

杉本博司の護王神社。この神社に直島の神は宿るのか?

瀬戸内国際芸術祭の開催地である直島で、「家プロジェクト」というアートプ…

モノに喋らせる。皿が泳ぐプール。 by セレスト・ブルシエ=ムジュノ(Céleste Boursier-Mougenot)

20世紀のアメリカで活躍した美術家、マルセル・デュシャンは、当時のアー…