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自爆テロ犯が語る、千夜一夜物語。 シャリーフ・ワーキド(Sharif Waked)の作品

投稿日:2012年9月29日 更新日:

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「To Be Continued」 Sharif Waked(2009)

 上の写真は、ある動画のワンシーンなのですが、テロリストらしき人物が犯行予告をしている、まさにその瞬間をとらえているように見えます。
 思わずドキッとさせられるこの映像、実は、シャリーフ・ワーキド(Sharif Waked)というパレスチナ人アーティストの、「次回へ続く(To Be Continued)」という作品です。

 アートであると認識してもなお、強烈なメッセージ性を持っているこの作品に、私は、強い負のパワーを感じました。いったいどれほど重たい作品だろうか。はじめ私は、その世界に入り込むのをしばし躊躇しました。
 

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アーティストによってつくられた自爆テロ予告

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 ところが、日本語の字幕に目をやると、どうやら、男はそれほど深刻な内容を語っているわけではなさそうです。むしろ、その言葉の集積は、緊張感のあるシチュエーションには全く不似合な、ゆったりとした時の流れを醸し出しています。

 解説によると、この動画に出てくる男はパレスチナ人の俳優で、彼は、なんと、イスラムの古典文学「千夜一夜物語」を読んでいるそうです。どうりで、言葉の羅列がまったりしています。

 彼は、私だけでなく、おそらく世界中の多くの人が持っているであろうイスラムに対する偏見を抽出するため、そのステレオタイプな印象を自爆テロ犯の映像としてつくりあげたのだと思います。そして、そのイメージを一歩引いて見せるために、わざとそこに「千夜一夜物語」という異物を混入させたのでしょう。
 なるほど、こんなスゴ技は、アートという形でしか成しえないことです。

なぜ千夜一夜物語なのか?

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 ところで、ワーキドは、なぜ男優に「千夜一夜物語」を読ませたのでしょうか?

 私は、初めてこの作品を鑑賞した時、そのことについてそれほど深く考えませんでした。イスラム世界と深い関係があり、なおかつ自爆テロを連想させないものだったら何でも良かったのではないか、私はそう思っていました。
 しかし、この作品についての様々な感想をウェブ上で見ているうちに、この問いについて面白いことを書いている記事に出会いました。

 その記事は、「千夜一夜物語」のあらすじとワーキドの作品の関係に言及していました。
 「千夜一夜物語」のあらすじは次のようなものです。

  むかしむかし、シャフリヤールという王様が、お妃の不貞がきっかけで大変なショックを受け、病的な行為を繰り返すようになりました。それは、若い女性と一夜を共にした後、翌朝処刑するというものです。彼の犠牲になった女性は、3,000人にのぼったそうです。 

 そんな時、この王の残虐な行為を止めさせるため、シェハラザードという女性が、妃にして欲しいと王に自ら願い出ました。

  王妃となったシェハラザードは、王の興味を惹くために、歴史上の物語や悲劇、喜劇、古くからの言い伝えなど様々な物語を語って聞かせました。彼女が繰り広げるその物語はけっして終わることがありません。夜が更けたころ、決まって「続きは明日」というシェハラザードは、そうして処刑を免れ、千夜、物語を語り続けました。そして、とうとう、王に女性の処刑を止めさせることに成功し、彼との間に3人の子供までもうけました。

 先の興味深い記事は、こんなことを言っています。

 ワーキドの映像作品は、絶えず繰り返されるので終わりがない。だから、「自爆テロ犯」は、「犯行予告」をくり返し表明し続ける。それはまるで、自らの死を回避するためにシェハラザードが王に聞かせた、終わることのない物語のようだと。

 映像の中の「自爆テロ犯」はシェハラザードではないか。なるほど、面白い解釈です。
 では、「王」とはだれなのでしょうか。彼に自爆テロを命じた、組織の幹部でしょうか。私は、そうではないと思います。「王」とは、もしかするとこの映像を見ている人すべてなのかもしれません。千夜一夜物語の語り手と聞き手、両者の間には殺意はありません。作者のシャリーフ・ワーキドは、こうした交流こそが、不毛な死の連鎖を終わらせる唯一の方法なのだと訴えているように思います。
   

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シャリーフ・ワーキドのこの映像作品は、現在森美術館で開催されている「アラブ・エクスプレス展」に出品されています。

参考サイト
「Sharif Waked ‘To Be Continued…’ 2009」 21st CENTURY BLOG
「Sharif Waked 」 QAG GMA
「Sharif Waked 」 VIMEO
「Art’s Powerful Message for the Merchants of Death」HUFF POST

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