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「パラレルワールド」 イ・チャンウォン(Changwon Lee)がつくる幻想空間

投稿日:2012年10月3日 更新日:

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「Parallel World」  Changwon Lee(2012)

 今回ご紹介する作品は、とても美しい作品です。暗がりの中に柔らかに浮かび上がったシルエット、子供の頃に読んだ童話のように、とても優しい雰囲気を持っています。
 幻想的なこの作品は、韓国人アーティスト、イ・チャンウォン(Changwon Lee:1972年?)による「パラレルワールド(Parallel World)」というインスタレーションです。

 この作品の特筆すべき点は、視覚的な美しさだけではありません。この作品が私の興味を引いてやまないのは、居心地が良さそうに感じられるこの空間が、実は、私たちが不快に思うイメージの集積によってつくられているからなんです。

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残虐なイメージをもとにつくられた幻想空間

 壁沿いに設けられたテーブルから、優しい光が発せられています。この光が壁に映し出され、先ほどのシルエットを作り出しているようです。ちょっと覗きこんでみましょう。

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 テーブルの上には、幻想的な雰囲気には似つかわしくない、新聞や雑誌などから切り抜かれた写真が散在しています。
 理不尽な暴力にもがき苦しむ子供、ふいの凶弾に倒れた女性、あるいは、伏したまま動かなくなった男性。戦争によって荒廃した地域で撮影された、残虐なシーンばかりが並んでいます。
 そして、彼らの体は、作家の手によって輪郭を切り取られています。暗く沈みこんだその姿は、あたかも、これらの人々が既にこの世にはいないことを示しているように思えます。
 先ほどの、壁に映し出された美しいシルエットは、実は、彼らが壁面に投影された姿だったのです。

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シルエットを、本来の文脈から解放する

 この作品は、離れた場所から眺めた時にはとても平和なイメージを提示しているのに対して、作品を間近でじっくりと鑑賞した場合には、それとはまったくかけ離れた受け入れがたい印象をともないます。
 この作品との距離のとり方によって派生するイメージのギャップは、Leeの他の作品を知る上でも大切な要素のひとつになっています。

 壁面に投影された光のシルエットが本来属していた世界から脱し、もう1つの物語を紡ぎだすことを、彼は、「シルエットが、本来の文脈から自由になる」と表現しています。この作品のシルエットが本来属していた文脈とは、新聞や雑誌を媒体とした情報の中にあります。

 Leeが先のような残虐な写真をアートに用いることは、それが新聞や雑誌に掲載されることと同様に暴力的だと感じる人もいることでしょう。しかし私は、その人々のイメージを彼が用いた意味は、報道機関によるそれとは一線を画すと思います。彼の作品は、イメージを固定する方向には作用しません。
 Leeは、2つのまったく異なる世界(Parallel World)を共存させることで、凝り固まったイメージの中に閉じ込められたものを、もっと広くて自由な世界へと解放したかったのだと思います。

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※この作品は、森美術館で開催されている、MAM PROJECT 017(?10月28日)で鑑賞することができます。

Parallel World(2011)
韓国で展示された同作品を、こちらからご覧いただけます。
Lee Changwon hp
リーがこれまで手がけてきた作品は、こちらからご覧いただけます。

参考サイト:
「A Parallel World where silhouettes“break loose”?Report on Lee Changwon’s artist talk」 MORI ART MUSEUM
CHANGWON LEE texts

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