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コーヒーの出し殻でつくられた安重根と金九。韓国人アーティスト、イ・チャンウォンの不思議な作品

投稿日:2012年10月6日 更新日:

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左:「Hurrah!」、右:「A Day in Namsan 」 イ・チャンウォン(Changwon Lee、韓国) 2009

 柔らかく浮かびあがったシルエット。まるで絵本のワンシーンのような、懐かしい気持ちがする作品です。

 一見すると、これらは、板の上に描かれた絵のように見えます。しかし実際には、この人型のシルエットは、平面の上に描かれているわけではありません。目の錯覚によって、人の姿に見えているだけなのです。

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 作品に、もう少し近づいてみましょう。このシルエットがどのようにつくられているかが、よく分かります。

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 冒頭の写真とはまったく異なる様相が見えてきました。
 等間隔で何段にもわたって壁に設置された、白くて細長い板。それはまるで、壁面に取りつけられたブラインドのようです。
 板の上には、ところどころに茶色い粉が盛られているのが見えます。実は、これ、コーヒーの出し殻なんです。

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 水平に並べられた板には白いニスが塗られており、表面が鏡面のようになっています。微妙な光の反射によって、コーヒーが盛られた周辺には、黒っぽい影ができています。

 ブラインドのような構造物、コーヒーの出し殻、そして影。冒頭の写真に映るシルエットは、これらの素材が生み出した目の錯覚だったのです。

コーヒーの出し殻で銅像を表現する

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 冒頭の写真をもう一度見てみましょう。画面右側の作品をご覧ください。

 この作品に浮かび上がるシルエットは、2体の銅像を表わしています。ソウル市内の南山(ナムサン)公園にある、金九(キム・グ)と安重根(アン・ジュングン)の銅像です。
 これらは、日本の植民地支配を打ち砕いた韓国の精神の象徴として建てられたのだそうです。

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南山公園にある銅像 左:金九(キム・グ) 右:安重根(アン・ジュングン)

 イ・チャンウォンは、なぜこの2体の銅像を表現するために、コーヒーの出し殻を使ったのでしょうか。それは、コーヒーの出し殻が、銅像の素材としては、あまりにもふさわしくない物質だからだそうです。

 銅像は、一般的には青銅でつくられます。おそらく、この2体もそうなのでしょう。朽ちにくい強固な素材である青銅を使用することで、ヒーローとしての彼らのイメージを、さらにゆるぎない、また、永続的なものに強化しているように思えます。しかしながら、実際は、そのような銅像自体も、また、ヒーローとしての彼らのイメージも、コーヒーの出し殻のように脆く儚いことをイ・チャンウォンは示しているのです。

 彼は、自身の制作の意図について、「見せかけのイメージの背後には、多くの事象が隠れているという関係性を示したい。」と語っています。彼は、独特の手法によって、それを視覚的に見事に表現していると思います。

  ところで、「見せかけのイメージ」を持っているのは、なにも先の2体の銅像だけに限ったことではありません。私たちは、つくられた「物語」に囲まれて生きています。皆んなでそれらに熱狂するのも楽しいのですが、時には、少しだけ斜に構えて、「王様の耳はロバの耳」と呟いてみるのも悪くありません。イ・チャンウォンが、青銅をコーヒーの出し殻にすり替えたように。

Lee Changwon hp
イ・チャンウォンの他の作品は、こちらからご覧いただけます。

参考サイト:
「A Parallel World where silhouettes“break loose”?Report on Lee Changwon’s artist talk」 MORI ART MUSEUM
CHANGWON LEE texts
A Day in Namsan :Lee Changwon hp
画像引用元:
A Day in Namsan :Lee Changwon hp
韓国…なんでも広場
白雲去来

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