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大日本帝國と米国。「青い目の人形」の物語 by ドナ・オン(Donna Ong)

投稿日:2012年11月11日 更新日:

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青い眼をしたお人形は
アメリカ生れのセルロイド

日本の港へついたとき
一杯涙をうかべてた

わたしは言葉がわからない
迷ひ子になつたらなんとせう

やさしい日本の嬢ちやんよ
遊んでやつとくれ

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かつて日本が自らを大日本帝國と称していた頃、アメリカから12,739体の人形が日本に贈られました。1927年。日露戦争に勝利し、日米間の緊張が高まっていた時期です。政治的、経済的な対立を文化的な交流で緩和すべく、米国人宣教師の呼びかけで行われたそうです。「青い目の人形」と呼ばれたその人形たちは、全国の小学校に寄贈され、とても歓迎されました。

日本からは、その返礼として、58体の市松人形がアメリカに贈られました。それらの人形は、寄贈を受けた各小学校の生徒からの募金により製作され、送り出す際には送別式まで開かれたそうです。

ちなみに、冒頭に記載したのは「青い眼の人形」という童謡の歌詞です。はるばる海を渡ってきた12,739体の人形の姿が目に浮かびます。異国、女の子、哀愁。なんだか童謡の「赤い靴」に似ています。そう思って調べてみたら、どちらも野口雨情作詞、本居長世作曲だそうです。お二人ともこういう世界観が好きだったんですね。
ところで、とても意外なことに、この童謡は「青い目の人形」が贈られる6年前の1921年に発表されています。つまり、米国から寄贈された人形をうたった歌ではないのです。偶然って面白いですね。

まあ、童謡の話は置いておいて、話を本筋に戻します。文化的な交流の話です。結果として日米の開戦は避けられませんでしたが、彼らの努力は無駄ではなかったと思います。少なくとも、一つのモデルケースにはなりえます。

私は、すべての戦争を否定する立場ではありません。他国からミサイルを打ち込まれたら戦わざるをえない場面もあると考えています。ただ、もしそういう状況を未然に防ぐことができるとしたら、それに越したことはありません。そのための手段の一つが文化の交流なのだと思います。

いま、日本と中国は領土問題で対立しており、それは日本人として決して心地の良いことではありません。でも香港のカンフー映画は好きです。要するにそういうことだと思います。

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「Friendship Doll」  Donna Ong (2012)

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは、シンガポール出身の女性アーティスト、ドナ・オン(Donna Ong :1978年?)による、「フレンドシップ ドール(Friendship Doll)」という作品です。11月18日まで、品川区の原美術館に展示されています。

実はこれ、先ほどの「青い目の人形」を題材とした作品なんです。

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薄暗い部屋の中に並ぶ5つの小さなモニター。モノクロの映像が映しだされているのですが、初見では、それがなんなのか判別できません。タイトルから察するにおそらく映っているのは人形なんだろうな、くらいにしか思わないことでしょう。なかなか掴みどころのない作品です。

入口に掲示されている解説を読むと、この作品が青い目の人形にまつわるエピソードを題材としていること、そして、作者のドナ・オンは、鑑賞者に、この作品をきっかけとして、そのエピソードにもう一度思いを馳せて欲しいと考えていることが書かれています。

ドナ・オンは、青い目の人形をめぐる2国間のこの出来事を多くの人に知ってもらいたいと考えているにもかかわらず、なぜこれほどまでに見る者を突き放した作品を制作したのでしょうか。
おそらく彼女は、あえて必要最小限の情報だけを提示することで、その隙間をそれぞれの想像力で埋めて欲しいと考えているのだと思います。
「モニターにぼんやりと姿を現しているのは人形だろうか?」、「人形だとしたら、当時つくられた本物だろうか?」、「2体の人形のようだが、それらは日本とアメリカでつくられたものだろうか?」、そうした思いを巡らせながら、この史実を通して、各々の物語をつくりあげて欲しいのでしょう。

かくいう私もこの作品がきっかけで、青い目の人形のことを知り、いろいろと調べ、考えました。まさに彼女の手のひらの上で転がったわけです。

参考資料:
Donna Ong: Secret Interiors and Dream-scapes
Crossing borderlines of consciousness

画像引用元:
「Lauren」 by Anna Marie Gearhart

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