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モノに喋らせる。皿が泳ぐプール。 by セレスト・ブルシエ=ムジュノ(Céleste Boursier-Mougenot)

投稿日:2012年11月24日 更新日:

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20世紀のアメリカで活躍した美術家、マルセル・デュシャンは、当時のアートシーンに「レディ・メイド(Ready-made)」という価値観を提示しました。
レディ・メイド、既成品。その言葉からは、工場で大量生産された画一的な製品が思い起こされます。デュシャンは、そうした既成品を、ほぼそのままの形でアート作品として発表したのです。

デュシャンの作品には多くの美術関係者が戸惑いました。それまでは、「アートは、手仕事によって生み出されなけらばならない。アートとは、この世にたった1つの美しいものを提示することである」という暗黙の了解があったからです。にもかかわらず彼は、男性用便器を美術館に展示して、「これはアートである」と言い始めたのです。ふざけるな。この作品を見て、怒りを覚えた人もいたことでしょう。

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マルセル・デュシャンは、「モノ」に新たな「記号」を与えようとした。

デュシャンは、なぜ、このような作品を制作したのでしょうか。それは、「アートとは、観る人の思考を促すものである」という考えが彼にあったからです。けっしてフザケていた訳ではありません。

既成品には、社会的な「役割」が与えられています。「記号」と言い換えてもいいかもしれません。用を足すための便器、自転車を動かすための車輪。彼は、そうした「モノ」から、「記号」を切り離そうとしたのです。美術館に展示される便器。初めてそれを観た人は強い違和感を覚えることでしょう。でも、いつしかその違和感は消えるかもしれません。もしそうなれば、それこそが、便器の形をした「モノ」に新たな「記号」が与えられた瞬間なのです。

セレスト・ブルシエ=ムジュノの「レディ・メイド」

さて、今回ご紹介するフランス出身のアーティスト、セレスト・ブルシエ=ムジュノ(Céleste Boursier-Mougenot)は、デュシャンの影響を強く受けた作家です。彼もデュシャンと同様に「レディ・メイド」を用いて制作をしています。彼は、こんなことを言っています。

「私たちはもっとモノに喋らせるべきだ」

モノに喋らせる。彼の手にかかれば、もしかすると便器の声も聞けるかもしれません。
今日は、そんな彼の作品を2つご紹介します。

皿が泳ぐプール


「Variation」  Céleste Boursier-Mougenot(2009)

まず1作目は、現在、東京都現代美術館で開催中の「アートと音楽」に展示されている作品です。まずは映像(サンパウロで展示された時の映像)を見てください。

ホールの重厚感、透き通った空色のプール、そしてそこに浮かぶ大小様々な白いお皿。視覚的にもとても綺麗な作品です。また、お皿が奏でる音は、まるで風鈴のように透きとおっています。ただ単にお皿をプールに浮かべただけではこうはいきません。器の種類や量、それにプールの水を循環させるためのシステム。作者はかなり綿密に計算をしているようです。そして、その最たるものは水温です。作者によれば、30度に保たれた水温こそが、豊かな音質を維持するためのキーとなっているようです。

面白い作品ですね。西洋的な石造りの建築物にとてもマッチする作品だと思います。たとえばキリスト教の教会。宗教的なものと相まって、より荘厳な雰囲気をまとうことでしょう。

小鳥と観客が奏でる音楽


「from here to ear」  Céleste Boursier-Mougenot(2010)

次の動画をご覧ください。これは、彼の作品の中で最も幅広く人気のあるものです。
エレキギター、ベース、シンバル。小鳥たちは餌を食べながら戯れあい、楽器から楽器へと跳ね回ります。そして、部屋に観客が入ることで、鳥たちの動きはより慌ただしくなります。小鳥と観客が偶然に奏でる音楽。これも、ブルシエ=ムジュノの音楽なのです。

1つ目の作品は、食器であるお皿が楽器へと転化する作品でした。一方この作品は、すでに楽器として存在するエレキギターやベースが、人ではなく、鳥によって奏でられる作品です。これらの作品はともに、モノの役割を少しだけずらしているのです。そのズレから生じる新たな思考、ブルシエ=ムジュノはそこに興味があるのだと思います。やっぱり、根っこの部分はデュシャンと一緒ですね。

マルセル・デュシャンの100年の呪縛

デュシャンが便器を作品として発表したのが1917年、今からおよそ100年近く前です。100年の呪縛。
私は、今回ご紹介したブルシエ=ムジュノの作品は好きです。お皿が奏でる音は綺麗だし、小鳥はカワイイし。でも、デュシャンが提示したアートの形は簡単に乗り越えられるものではなさそうです。

参考サイト:
HANGARBICOCCA PRESENTS CELESTE BOURSIER-MOUGENOT2011
The Rock ‘n’ Roll birds of Céleste Boursier-Mougenot
Hate modern art? Guitar-playing exotic birds will change your mind
céleste boursier-mougenot
Céleste Boursier-Mougenot
Céleste Boursier-Mougenot
画像引用元:
Musical byrds By Mypouss 

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