やまでら くみこ のレシピ

人気レシピの作り方を分かりやすく紹介します。

音が描く模様。聞こえない音の視覚的な美しさ by カールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)

投稿日:2012年12月16日 更新日:

s-thunder

子どもの頃、私は、雷が大嫌いでした。降りしきる雨の中、突然に光る空、そして遅れてやってくる轟音。その振動は、時に家の床をも震わせます。それが怖くて、雷が鳴るとよく母にしがみついていたものです。

音は空気の振動である。小学校でそう習った時、真っ先に思い浮かんだのは雷の体験です。なんというか、体感を伴って理解できました。暗闇のなか、ものすごい勢いで迫ってくる振動、それこそが音なんだと。

さて、今日ご紹介するアーティストは、ドイツ出身のカールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)。彼の作品のテーマは、「音」です。彼は、ミュージシャンとしても活躍する一方で、それだけにとどまらず、視覚的に「音」を表現する作品も多数制作しています。

スポンサーリンク

「音」未満の振動を素材とした作品

「音」。あらためて考えると不思議な現象ですよね。もとはと言えば、ただの振動です。それが空気を震わせて、その次に鼓膜に伝わって、なんだかよく分からないけれど、私たちは音と認識するわけです。で、その振動が細かすぎても、逆に粗すぎても、私たちは音として捉えることできません。そして、音楽は、私たちが聞き取ることのできる、ごく狭い範囲の空気の振動だけを組み合わせているわけです。

カールステン・ニコライの作品の興味深い点は、聞き取ることのできる音だけではなく、私たちの耳では捉えることのできない空気の振動すらも作品の素材としていることです。

今日は、そんな彼の作品の中でも、最も分かりやすい作品の1つである「ミルク(milk)」をご紹介します。

s-milk
「milk」 Carsten Nicolai(2000)

上の写真は、プラハでの展示風景です。より鮮明な画像は、こちらでご覧いただけます。なお、この作品は、東京都現代美術館で現在開催されている「アートと音楽」展で鑑賞することもできます。

壁にかかっている数枚の写真。そこには形状がそれぞれ異なる模様が写っています。「ミルク」というタイトルのとおり、被写体は牛乳なのですが、もちろん、ただ普通に牛乳を撮影したわけではありません。人間にはほとんど聞き取れないくらいの低周波音、数値で表すと10Hzから150Hzくらいの音、ここに写っているのは、そうした音を浴びて波打つ牛乳の表面なのです。

Hz(ヘルツ)。たまに耳にする言葉ですが、実際のところ、それが何を表しているのか、私自身あまりよく分かっていません。周波数。調べてみると、1秒間に1回振動すると1Hzだそうです。2回だと2Hz。なるほど、そういうことなんですね。

環境省のホームページに分かりやすい図が載っています。
ss-syuuhasuu

ニコライが「ミルク」を制作するにあたって使用した低周波音は、10から150Hz。この図を見ると、人間が音として聞き取ることができる「可聴音」と聞き取ることができない「超低周波音」のちょうど境界あたりの音になります。

ニコライによれば、低周波音を10Hzから150Hzにあげていく過程で、牛乳の表面に浮かび上がるさざ波は刻々と変化するそうです。
10Hzの超低周波音では、表面が大きく波打ちます。この段階では、まだ波に規則性はなく、まさにカオスとも言えます。しかし、周波数を次第に上げるにつれて、その模様は徐々に細かくなり、50Hzあたりで規則性が見られるようになるそうです。しかし、さらに周波数を上げると、さざ波は、一定のところで消えてしまいます。

聞こえない音の視覚的な美しさ

人が聞こえるか聞こえないか、そのちょうど境目あたりの音。私たちが、普段の暮らしの中で全くと言っていいほどその存在を意識しない音。ニコライは、そうした音をスピーカーと牛乳を使って可視化しているのです。彼はこんなことを言っています。

 「音」の美しさを考察するときに、多くの場合、視覚的な要素は排除されています。しかし、私は音を可視化することに強い興味をもっており、なかでも、周波数が低すぎたり高すぎたりして人間が知覚しにくい音に特に注目しているのです。

今回ご紹介した作品自体はまるで「理科の実験」のようで、ちょっと地味ですが、その切り口はとても面白いです。カールステン・ニコライ。聞くところによると彼は、幼少時代、コウモリとコミュニケーションを取れると信じていたとか。その頃からすでに聞き取ることのできない音に興味があったんですね。雷に震えていただけの私とは違います。

ちなみに、ミュージシャンとしての彼のパフォーマンスはかなり派手なものです。ノイズを組み合わせたようなサウンドとめまぐるしく切り替わる光のエフェクト。「ミルク」を鑑賞した後に彼のライブ映像を見ると、その幅の広さに驚かされます。


(↑ 幅40メートルに及ぶ壁面を使った、ド迫力のライブパフォーマンス。今年の 11月29日に撮影された映像です。ちなみに、音楽活動を行う際にはアルヴァ・ノト(alva noto)という名前を名乗っています。)

参考サイト:
carsten nocplai hp
CARSTEN NICOLAI
Carsten Nicolai
Carsten Nicolai: Pionier  The Pace Gallery, New York
Carsten Nicolai
To start seeing, you have to eliminate certain things.
Carsten Nicolai Mines Gold Out Of Glitches
Carsten Nicolai unidisplay
Fused: Alva Noto & Ryuichi Sakamoto Interviewed
World Design Congress 2009, Beijing: Carsten Nicolai / Alva Noto
Carsten Nicolai – Profile
Carsten Nicolai
低周波音について 環境省

画像引用元:
Thunder & Lightning By EuroMagic
Carsten Nicolai’s “Milk” at DOX  By xmacex

スポンサーリンク

関連記事

no image

クリスチャン・マークレーの「Christian Marclay Scrolls」展

先日、ギャラリー小柳で「Christian Marclay Scrolls」展を見てきました。 タイトルが示す通り、クリスチャン・マークレー…

モノに喋らせる。皿が泳ぐプール。 by セレスト・ブルシエ=ムジュノ(Céleste Boursier-Mougenot)

20世紀のアメリカで活躍した美術家、マルセル・デュシャンは、当時のアートシーンに「レディ・メイド(Ready-made)」という価値観を提示…

「パラレルワールド」 イ・チャンウォン(Changwon Lee)がつくる幻想空間

「Parallel World」  Changwon Lee(2012) 今回ご紹介する作品は、とても美しい作品です。暗がりの中に…

no image

アートとエンターテイメント?森美術館 田口行弘展から?

 森美術館で開催されている田口行弘さんの展覧会を見てきました。 田口さんは、御自身の作品を「パフォーマティブ・インスタレーション」と呼んでい…

no image

世界の一流アーティストによる作品を、超激安価格でコレクションする革命的な方法とは? s[edition]について

昨日、ダミアン・ハーストの作品が8ドルで買える、s[edition]というサイトを紹介しました。 なんでハーストの作品がこんなに安いかって、…

ピックアップ記事

ジャクソン・ポロックのドリッピングを科学する。

ジャクソン・ポロックが描いた「ドリップ・ペインティング」は、一見、子供…

村上隆のゲルニカ。「五百羅漢図」

村上隆さんの大規模な回顧展「Murakami-Ego」が、2月9日から…

コンクリート製「トリュフ」に暮らす(建築家:アントン・ガルシア=アブリル)

天然の岩の内部をくりぬき、そこに窓を設置したかのような構造物。これは、…

ロッククライマーがつくる彫刻  ダグ+マイク・スターンの「ビッグ・バンブー」

写真をご覧ください。木材を積み上げてつくられた、巨大な鳥の巣のような構…

音が描く模様。聞こえない音の視覚的な美しさ by カールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)

子どもの頃、私は、雷が大嫌いでした。降りしきる雨の中、突然に光る空、そ…

セザンヌの絵が解き明かす、現代の脳科学

画家セザンヌが生きた19世紀、人間の感覚は、外の世界のありのままの姿を…

刺青から紐解く炭鉱夫の恐怖。山本作兵衛の世界

2011年5月、画家山本作兵衛の絵が、日本で初めて世界記憶遺産に登録さ…

地中美術館の「モネの一室」が素晴らしい。オランジュリー美術館との比較。

「睡蓮」によって大装飾空間をつくり出す。 晩年のモネのそうした構想をも…

杉本博司の護王神社。この神社に直島の神は宿るのか?

瀬戸内国際芸術祭の開催地である直島で、「家プロジェクト」というアートプ…

モノに喋らせる。皿が泳ぐプール。 by セレスト・ブルシエ=ムジュノ(Céleste Boursier-Mougenot)

20世紀のアメリカで活躍した美術家、マルセル・デュシャンは、当時のアー…

サイト内を検索

このブログについて

このブログは、鎌倉在住の主婦が綴るレシピサイトです。

これは皆んなでシェアしないともったいない!と思った事柄を記事にしています。

最近の話題は、こんな感じです。

  1. 人気の簡単料理のレシピ
  2. 夕食やお弁当の節約献立
  3. 忙しくてもラクチンな作り置き
  4. 無理なく続けられるダイエットレシピ
  5. 食材の基本的な調理法や保存方法