やまでら くみこ のレシピ

人気レシピの作り方を分かりやすく紹介します。

中国共産党が仕掛けるLove作戦

投稿日:2012年12月8日 更新日:

s-ai jing

中国の現代アート界で活躍していて、名前が「アイ」のアーティストといえば、誰?
現代アートに多少なりとも詳しい人であれば、おそらくアイ・ウェイウェイの名が一番に思い浮かぶのではないでしょうか。鋭い美術評論、そして社会運動。政治的・社会的なメッセージ性が強い彼の活動は、時に中国政府との対立を生み、しばしばニュースにも取り上げられます。ちなみに彼は、脱税を理由に1,200万元以上もの巨額の追徴金支払いを命じられ、現在、裁判中です。ある意味、政治的にもっともスキャンダラスなアーティストと言えると思います。

でも、今回取り上げる「アイ」さんは、アイ・ウェイウェイではありません。彼女の名はアイ・ジン(艾敬 Ai Jing:1969年から)、ビジュアルアーティストです。彼女は、90年代にポップス・シンガーとして人気を博したのち、現代アートのアーティストに転身しました。ビジュアルアーティストとしての活動を本格的にはじめたのは、だいたい2007年頃からのようです。そんな彼女の大規模な個展が、先月より北京の中国国家博物館で開催されています。

スポンサーリンク

s-national museum of china

中国国家博物館。天安門広場の隣にあるこの博物館は、中国における革命の歴史を物語る宝物や資料を展示する博物館として知られています。中国における最も権威的な博物館の1つと言えるかもしれません。言ってしまえば、現代アートなどとは縁遠い、おカタイ博物館なのです。そうした場所で、ビジュアルアーティストとしてはそれほど有名でないアイ・ジンが展覧会を行う。意外な組み合わせです。

可憐な歌姫の政治的意図

アイ・ジンといえば、その素朴で美しい容姿と可愛らしい歌声が印象的です。しかし、そうした可憐なイメージとは裏腹に、その活動には政治的意図があるのではないかと一部では言われています。

彼女のデビュー曲は「私の1997年(我的1997)」。1997年、それは香港が中国に返還された年です。
アイ・ジンは、この曲で、香港返還を待ちわびる中国人の心境を歌い上げ、高い人気を博しました。私もちょうどその頃中国を長期にわたって旅行していたのですが、旅行者である私の耳にも自然と入ってくるほど、色々な場所でこの曲がかかっていました。


「私の1997年」

【歌詞の一部抜粋(訳)】 

1997年は目前ね
ヤオハンってどんなかしら?
もうすぐ1997よ!
香港に行けるんだわ!

当時は歌詞をまったく理解していませんでしたが、あらためて調べてみるとこういう歌詞だったんですね。おもしろい。日系ショッピングセンターのヤオハン(1997年9月に倒産)が、本土の中国人にとっての香港の象徴のようなものとして歌われています。

こんな歌詞もあります。

【歌詞の一部抜粋(訳)】 

いつから香港ってあるの?
香港人ってどんな人なのかしら?
彼は瀋陽に来られるのに
私は香港に行けない

アイ・ジンの彼氏が香港にいるという設定のようですね。いずれにしろ、この曲が当時の中国人の気持ちを盛り上げ、一つにまとめ上げることに一役買ったのは間違いないようです。

ちなみに、アイ・ジンは、この10年後に「私の1997年と2007年」という新曲をリリースしています。こちらは、先の「私の1997年」の大ヒットを受けて、香港の政府観光局が、アイ・ジンに曲の制作を依頼。そうして実現したものなのだそうです。


「私の1997年と2007年」

【歌詞の一部抜粋(訳)】

今はもう2007年
こうしてまた愛する香港にやってきた私
夜の香港はグルメタウン
真夜中の香港でロマンスが始まる
2人でヴィクトリア湾に行くの 

と、まあ、新しい方はこんな感じです。

たしかに、この2つの曲の歌詞を読むと、政治的な意図があるという指摘は的を得ているように思います。

中国共産党とLove作戦


「I Love Ai Jing」展 (中国国家博物館にて)

それでは、中国国家博物館で現在開催中の展覧会はどうでしょうか。
CNNの記事によれば、アイ・ジンの展覧会が始まったのは、中国共産党の最高指導者が交代した数日後です。そして、今回の展覧会のテーマは、故国や生まれた町に対する彼女の愛情です。

開催の時期、テーマ、そして開催場所を考えると、こちらにも何らかの政治的意図があると読み取ることもできます。しかし、だからといって、それだけで彼女の作品を片付けてしまうのはとても勿体ないことだと思います。

先ほどのCNNの記事には、中国国家博物館の副館長の言葉も紹介されています。

 私たち中国人は、過激で難解な作品を望んでいるわけではない。アイ・ジンの作品のテーマであるLove、それこそが私たちが欲しているものなのだ。

たしかに中国の現代アートというと、体制に批判的で重たい作品をつい思い浮かべてしまいます。実際に、海外では、アイ・ウェイウェイを筆頭とするそうしたアーティストの作品がウケていることも事実です。けれども先の副館長は、海外で評価される作品が、必ずしも中国国内に暮らす中国人が求めている作品ではないと言っているように思います。

体制に抑圧されたアーティストが生み出す作品はたしかに見応えがあります。バックグラウンドにある物語が、その作品の魅力をさらに引き立てるからだと思います。それは、中国に限らず、たとえば中東のアーティストにも言えます。しかし一方で、平和な、心が休まるような作品というのも、また良いものです。

「Love」。くすぐったくなるようなテーマです。でも、現代アートのひとつのあり方として、可能性を感じます。中国政府の意向とか、そういうどうでもいいことは置いといて、彼女の作品を鑑賞したいものです。

参考サイト:
Art in Beijing: National Museum showcases other ‘Ai’ CNN
Ai Jing Returns  GLOBAL TIMES
艾敬(アイ・ジン)♪私の1997と2007♪ だってぇえ

スポンサーリンク

関連記事

no image

中国人の文化的欲求を満たすアート

クーリエ ジャポン 9月号 に、北京北部でデジタルプリント会社「時間機器(タイムマシン)」の技術顧問をしているXu Xi(シューシー)さんと…

「アイ・ウェイウェイは語る」★★★★☆ ”凄い”と表現するくらいしか出来ない、その程合いがリアルだと思います。

 「アイ・ウェイウェイは語る」  H・U・オブリスト/著 坪内祐三/文 尾方邦雄/訳(みすず書房 2011年11月) おススメ度★…

no image

”中国政府よ、ヌードはポルノじゃない!!” アイ・ウェイウェイのわいせつ容疑について

 中国人アーティスト、アイ・ウェイウェイ氏に関するたいへん興味深いニュースを、昨日あたりからよく目にします。 アイ・ウェイウェイ氏は、今年の…

中国のアーティスト、アイ・ウエイウエイ氏解放の波紋

中国の美術家アイ・ウエイウエイ氏が、23日木曜日、およそ3ヶ月間の中国当局による拘束の後に解放されました。 彼は集まった記者団やファンに対し…

no image

中国で感じた表現の自由度について―美術家アイ・ウエイウエイ氏が警察に拘束される。彼の表現はさらに研ぎ澄まされるに違いない。―

中国の美術家アイ・ウエイウエイ(艾未未)氏の行方が分からなくなっているそうです。 ニューヨークタイムスによると、アイ・ウエイウエイ…

ピックアップ記事

ジャクソン・ポロックのドリッピングを科学する。

ジャクソン・ポロックが描いた「ドリップ・ペインティング」は、一見、子供…

村上隆のゲルニカ。「五百羅漢図」

村上隆さんの大規模な回顧展「Murakami-Ego」が、2月9日から…

コンクリート製「トリュフ」に暮らす(建築家:アントン・ガルシア=アブリル)

天然の岩の内部をくりぬき、そこに窓を設置したかのような構造物。これは、…

ロッククライマーがつくる彫刻  ダグ+マイク・スターンの「ビッグ・バンブー」

写真をご覧ください。木材を積み上げてつくられた、巨大な鳥の巣のような構…

音が描く模様。聞こえない音の視覚的な美しさ by カールステン・ニコライ(Carsten Nicolai)

子どもの頃、私は、雷が大嫌いでした。降りしきる雨の中、突然に光る空、そ…

セザンヌの絵が解き明かす、現代の脳科学

画家セザンヌが生きた19世紀、人間の感覚は、外の世界のありのままの姿を…

刺青から紐解く炭鉱夫の恐怖。山本作兵衛の世界

2011年5月、画家山本作兵衛の絵が、日本で初めて世界記憶遺産に登録さ…

地中美術館の「モネの一室」が素晴らしい。オランジュリー美術館との比較。

「睡蓮」によって大装飾空間をつくり出す。 晩年のモネのそうした構想をも…

杉本博司の護王神社。この神社に直島の神は宿るのか?

瀬戸内国際芸術祭の開催地である直島で、「家プロジェクト」というアートプ…

モノに喋らせる。皿が泳ぐプール。 by セレスト・ブルシエ=ムジュノ(Céleste Boursier-Mougenot)

20世紀のアメリカで活躍した美術家、マルセル・デュシャンは、当時のアー…

サイト内を検索

このブログについて

このブログは、鎌倉在住の主婦が綴るレシピサイトです。

これは皆んなでシェアしないともったいない!と思った事柄を記事にしています。

最近の話題は、こんな感じです。

  1. 人気の簡単料理のレシピ
  2. 夕食やお弁当の節約献立
  3. 忙しくてもラクチンな作り置き
  4. 無理なく続けられるダイエットレシピ
  5. 食材の基本的な調理法や保存方法