
ポルトガルの調味料「マッサ」のいろいろな作り方を、海外の情報を含めてご紹介します。
マッサは、パプリカをたっぷりと使った、鮮やかな赤色の調味料。
正式名は「マッサ・デ・ピメンタォン(Massa de Pimentão)」といい、ポルトガルでは、日本の醤油のように、どこの家庭にもあるポピュラーな食材の1つです。
マッサの魅力

そんなマッサは、日本でもじわじわと人気が出ています。
日本人も惹きつけられるマッサの魅力は、2つあります。
簡単に作れて、料理に幅広く活かせる
赤パプリカと塩さえあれば、マッサは自宅でも作れます。
また、マッサは塩気・甘み・酸味のバランスが良く、肉などの旨みを引き出してくれるため、美味しい料理が手軽に作れて便利です。
栄養価が高い
マッサに使われるパプリカは、細胞の老化を防いでくれるビタミンA・C・Eを豊富に含んでいます。
しかも、パプリカのビタミンは、加熱に強い。
美容や健康を気遣ったビタミンたっぷりの食事を作るには、もってこいの調味料ですね。
マッサの作り方
マッサの作り方はとても簡単で、原材料となる赤パプリカを塩漬けにして、ペースト状にしたら完成です。
ポイントは、パプリカに含まれている水分を、ほど良く取り除くこと。
そうすると、パプリカの旨みが存分に楽しめる、美味しいマッサが作れます。
とは言え、そんなシンプルな調味料も、作り方は実にさまざまです。
今日は、海外にお住まいの方のレシピを含めた、5種類のマッサの作り方をご紹介します。
レシピによって、パプリカの水気を取り除く方法が少しずつ異なります。
5種類の作り方の違いを簡単に説明すると、次のようになります。
パプリカの水気を取り除く方法
- 多めの塩をまぶし、重しをして漬ける。
- 少なめの塩をして、魚焼きグリルで焼く。
- 少なめの塩をして、オーブンで焼く。
- 塩をまぶし、重しはせずにそのまま漬ける。
- 重しをして塩漬けしてから干す。
この順番にレシピをご紹介します。
いろいろな作り方があって、面白いですよ。
塩をたっぷり使ったマッサ

まずご紹介するのは、KateLさんが考案したマッサのレシピです。
KateLさんのレシピの特徴は、かなり多めの塩を使うこと。
塩漬けをするだけで、パプリカの水気を、かなりしっかりと取り除いてしまいます。
後ほどご紹介しますが、パプリカの水気を飛ばすために、加熱する方もいます。
でもKateLさんは、パプリカには火を入れずに、塩漬けするだけ。
あとはペースト状にすれば完成です。
ただ、塩漬けは、けっこうしっかりと行います。
塩を多めにして、さらにパプリカはザルに入れて重しをし、水切りしながら、時間をたっぷりとかけて塩漬けをします。
パプリカにまぶす塩の量
ちなみに、「マッサ」のレシピをいろいろと調べると、パプリカにまぶす塩の量には、かなりの幅があります。
多めの塩をした方がパプリカの風味が濃く感じられて良いように思いますが、薄味のマッサが好きという方も、もちろんいらっしゃると思います。
塩の量には、これが正解というのはありません。
ただ、KateLさんのレシピのように、塩をたっぷり使ったとしても、パプリカに浸透する塩気には限度があります。
また、塩が効いていると、保存が効くというメリットもあります。
これからご紹介するマッサは、冷蔵庫で数ヶ月ほど日持ちがしますが、塩を少なめにしたレシピでは、数週間程度となっています。

前置きが長くなりましたが、KateLさんのマッサのレシピをご紹介します。
マッサができあがるまでには、5日ほどかかります。
材料
大きめの赤パプリカ | 4個 |
粗塩 | 2.2kg |
オリーブオイル | 120cc |
作り方
- パプリカは縦に4等分し、種がついた芯の部分とヘタを取り除く。
- ボールの中にザルを入れる。ザルの上に塩の半量を平らにしてのせる。ザルから塩が多少こぼれてもOK。
- 2の塩の上にパプリカの半量をのせる。皮の方を上にして、両サイドの丸まった部分をしっかり伸ばしながら、塩の上に並べる。(ちなみにここで、パプリカをちゃんと伸ばして詰めないと、カビが出やすくなるようです。)
- 3の上に塩の1/4をかぶせる。さらにその上に残りのパプリカすべてを、3と同じように並べる。最後に塩をすべてかける。
- 4の上に重たいボールや皿をのせる。これを冷蔵庫の中に入れて5日間置く。(上からラップなどをかけておくと衛生的です。)
- 5日間塩漬けしたパプリカの水気を、キッチンペーパーなどできれいに拭き取る。
- フードプロセッサーなどで、6をペースト状にする。
- 殺菌した容器に7を詰め、表面に1センチくらいオリーブオイルを注いだらできあがり。このままフタをきっちり閉めて、冷蔵庫で保存する。
ボールとザルについて
ボールとザルには、塩気のある食材を長時間入れます。
そのため、プラスチック・ガラス・セラミックといった、腐食しない素材で作られたものを使います。
また、大きさは、どちらも、パプリカと塩が入るくらいのものを用意します。
さらに、ザルは、直接塩をのせるため、目が細かいものの方が理想的です。
KateLさんのレシピで作ると、ちょっと粗めに砕いたトマトのような「マッサ」ができあがるそうです。
なお、最後に加えたオリーブオイルは、あくまでも日持ちさせるための工夫です。
使う時には、オリーブオイルをどかすようにして、下にあるペーストをスプーンですくい上げます。
オリーブオイルが少なくなってきたら、その都度足すと、鮮度をある程度キープできるようですよ。
この「マッサ」は、冷蔵庫で保存すれば、数ヶ月ほど日持ちがします。
(情報元:Portuguese Sweet Red Pepper Paste)
魚焼きグリルで焼いて作るマッサ

次にご紹介するのは、Wendy Ponteさんが考案したマッサのレシピです。
Wendy Ponteさんのレシピの特徴は、3つあります。
パプリカの皮に黒い焦げ色が付くくらい、しっかりと焼きます。
2つめは、焼いたパプリカの皮をはがすところ。
皮を取り除くと、なめらかなマッサが作れるそうです。
3つめは、風味づけにニンニクを加えるところです。
なお、できあがるまでには1日ちょっとかかります。
材料
大きめの赤パプリカ | 4個 |
粗塩 | 大さじ2 |
ニンニク | 大きめ2かけ |
エクストラバージン オリーブオイル | 大さじ6 |
作り方
- パプリカは縦に4等分し、種がついた芯とヘタを取り除く。
- ボールに1を入れ、塩をふりかけてよく混ぜる。ボールにフタをして、常温で24時間ほど置く。
- パプリカについた水気と塩を、キッチンペーパーなどできれいに拭き取る。
- ブロイラー(魚焼きグリル)を温め、パプリカの皮の方を上に向けて並べ、皮の一部に黒い焼き色がつくまで15~20分ほど焼く。
- 4を完全に冷ましたら、皮を取り除く。皮は簡単にはがれる。
- 5とニンニクをフードプロセッサーに入れ、ペースト状にする。撹拌している途中に、オリーブオイルを加えたらできあがり。
密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存する。
ちなみに、パプリカを焼く時間「15~20分」は、あくまでも目安です。
目で確認して、皮に黒い焦げ色がついたらOKだそうです。
なお、塩気は控えめになっているので、冷蔵庫で保存のうえ、2週間以内に使いきった方が良いようです。
(情報元:How to Make Massa de Pimentão)
オーブンで焼いて作るマッサ

続いて、Rochelle Ramosさんが考案した、マッサのレシピをご紹介します。
このレシピの特徴は、塩漬けする時間が12時間と短いこと。
そして、パプリカをオーブンで加熱するところです。
また、前にご紹介したレシピと同じように、パプリカの皮をむき、好みでニンニクを加えます。
マッサを作る場合、6日ほどかけてパプリカを塩漬けにすることをすすめる方が多いようですが、Ramosさんによると、時間がない場合は、12時間から24時間くらいでも、十分良い風味に仕上がるそうです。
材料
大きめの赤パプリカ | 6個 |
粗塩 | 大さじ2~3 |
オリーブオイル | 295cc |
(ニンニク) | 3かけ |
作り方
- パプリカは、種がついた芯の部分とヘタを取り、3センチ幅に縦に切る。
- 1をボールに入れ、塩をふってよく混ぜ合わせる。
- ボールをふきんなどでしっかりと覆い、常温で少なくとも12時間置く。
- パプリカについた水気と塩を、キッチンペーパーなどできれいに拭き取る。オーブンの天板の上に、パプリカを並べる。
- オーブンを162度(アメリカにおける華氏325度)に温めて4を入れ、1時間半~2時間焼く。
- 5のパプリカを冷まして、皮をむく。
- 6をフードプロセッサーにかけてペースト状にする。好みでニンニクも加える。
6にニンニクを加えてフードプロセッサーに30秒かけたら、オリーブオイルの半量を注いでさらに30秒撹拌する。最後に残りのオリーブオイルをすべて加え、1分撹拌したらできあがり。
密閉容器に詰めて冷蔵庫で保存する。
仕上がりは、とてもなめらかなペースト状になるようです。
保存期間は特に記されていませんが、他のレシピから推測すると、2週間くらいだと思います。
なお、保存性を高めたい場合は、ニンニクを加えない方が良いそうです。
もしニンニクの風味をプラスしたい場合は、マッサを適量取り分けてから、その都度ニンニクを加えるのがおすすめだそうです。
(情報元:Portuguese Recipe: Massa de Pimentão and Bifana Sandwiches)
ポルトガル料理店のシェフがすすめるマッサ

次にご紹介するのは、ポルトガル料理店「マヌエル高輪シュラスケリア」でシェフを務める巴田清明さんのレシピです。
分量などは分かりませんが、このレシピはまた、他とはまったく異なります。
塩をまぶしたパプリカを、そのまま冷蔵庫に2日ほど入れてからペースト状にします。
今日ご紹介したマッサのレシピの中では、最も手間がかかりません。
材料
赤パプリカ | 適量 |
粗塩 | 適量 |
オリーブオイル | 適量 |
作り方
- パプリカは、種がついた芯とヘタを取って6等分する。多めの粗塩をまぶし、冷蔵庫で2日間寝かせる。
- パプリカから出た水気を拭き取り、好みでオリーブオイルを加えて、フードプロセッサーにかけたらできあがり。
ちなみに私は、塩の量をパプリカ1個につき大さじ2にして、このマッサを作りました。
ほど良く塩気が効いた、みずみずしいマッサができました。
下の写真は、そのマッサを撮影したものです。

(一部情報元:TV「あさチャン!」2015年4月21日放映)
パプリカを天日干しして作るマッサ

最後にご紹介するのは、マッサの料理本「マッサ MASSA パプリカでつくる美味しい調味料」の著者・栗山真由美さんが考案した、マッサの作り方です。
栗山さんのレシピも、とてもユニークです。
重しをして塩漬けしたパプリカを、半日から1日干します。
お日様のパワーが加わったマッサが作れますよ。
材料
赤パプリカ | 2個 |
粗塩 | 大さじ4 |
作り方
- パプリカを4等分する。ヘタと種を取る。水で洗い、ペーパータオルなどで水気をしっかりと拭き取る。
- パプリカをボールに入れ、塩をまんべんなくまぶす。
- 2のパプリカの上に、皿やボールなどで重しをする。その上からラップをかぶせる。これを1週間ほど冷蔵庫に入れ、塩漬けする。
- パプリカの水気をペーパータオルなどできれいに拭き取り、半日~1日くらい天日干しする。
- フードプロセッサーなどで、4をペースト状にしたらできあがり。
手作り感を出すために、敢えて粗めのペーストに仕上げるのがおすすめだそうです。
なお、保存期間は、1~2ヶ月です。
(一部情報元:TV「バイキング」2015年6月3日放映)
マッサの食べ方・使い方
完成したマッサは、工夫次第でいろいろな料理に活用できます。

たとえば、マッサにオリーブオイルを加えてパスタソースを作ると、ひと味違った味わい深いパスタが完成します。

また、魚介類にも合います。
エビをごく少量のワインで洗ってさっと炒め、マッサだけでシンプルに味つけします。
気の利いたおつまみが、すぐに作れます。

もちろん、牛・豚・鶏といった肉にも、よく合います。
肉がとても美味しく感じられます。
今回は、マッサで下味をつけた鶏肉で、サンドイッチを作ってみました。
いつもの具材を挟んだあとに、マヨネーズ代わりにマッサをちょっと加えるだけでも、異国情緒溢れるサンドイッチの味が楽しめます。

ホームベーカリーで作るパンに、マッサを練り込んでみるのもいいです。
淡いオレンジ色の、可愛らしいパンが焼き上がります。
パンの旨みが増しますよ。
また、毎朝食べるオムレツの味つけにも使っています。
ひとさじ加えるだけで、卵のまろやかさが引き立ちます。
マッサがあると、短時間で美味しい料理が作れます。
とても便利ですよ。