
執筆家のドミニック・ローホーさんは、モノを極力持たない、シンプルな暮らしを提唱しています。
ドミニック・ローホーさんは、東京のワンルームよりも少し狭い、12㎡という小さな自宅で暮らしています。
ちなみに私は以前、雑誌「クロワッサン(2011年10/10号)」に掲載された彼女の自宅の中を拝見したことがありますが、12㎡の中には、シャワー室やキッチンやトイレもあります。
また小さな部屋の中には、小ぶりの収納がいくつかあるものの、どれもガラガラなのが印象的。
たとえば、幅40~50センチほどの4段の本棚。ここには、本が数冊と小さな時計と置物が1つあるだけ。
彼女のお気に入りのモノたちが、風通しの良い場所で、気持ち良さそうにくつろいでいると感じたものです。
そんな自宅に住んでいるドミニック・ローホーさんは、もしかしたら、2015年から日本で話題になっている「ミニマリスト」の先駆けのような存在かもしれません。

さてそんな彼女の近著「シンプルだから、贅沢」を読んで、私は、とても驚いたことがあります。
それはドミニック・ローホーさんが、自宅でキッチンペーパーを湯水のごとく使っているということ。
布巾や雑巾の代わりに、キッチンペーパーをジャンジャン使っているそうです。
ドミニックローホーさんが考える無駄とは

ドミニック・ローホーさんは、著書「シンプルだから、贅沢」の中で、次のように語っています。
私は、ソパラン(sopalin)と呼ばれるキッチンペーパーを、それこそ湯水のように使っています。1週間に1ロールくらいあっと言う間になくなってしまいます。
このキッチンペーパーでレンジの汚れ、シンクの水滴、急いでいる時はコップや食器なども拭き、拭いたあとはポイッと捨ててしまいます。
ソパラン(sopalin)とは、フランスで人気のキッチンペーパーです。
フランスのパリにお住まいのドミニック・ローホーさんは、キッチンペーパーを、布巾や雑巾の代わりに使っているそうです。
布巾や雑巾だったら、その都度洗えば何度も繰り返し使えるのに。節約派の方だったら、キッチンペーパーを惜しみなく使う生活に、違和感を覚えるかもしれません。
ちなみに私は、自分で名乗るほどの節約派ではありませんが、ドミニック・ローホーさんは刺し子を施したような美しい布巾を繰り返し丁寧に使っていると勝手に思い込んでいたので、ちょっとしたショックを受けました。
でもドミニック・ローホーさんは、ご自身にとっての無駄のない生活を考え抜いた末に、キッチンペーパーを使うことを選択しているそうです。
彼女にとっての無駄の定義は、「エネルギーを消耗させるもの」のこと。
キッチンペーパーをジャンジャン使うことよりも、洗っても決して真っ白にはならない布巾や雑巾を洗剤で洗ったり、また洗濯機を動かしたり干したりする労力の方が無駄。
そうした作業を考えると、「(キッチンペーパーを使うのは、)さほどわるいことのようには思えない」と、ドミニック・ローホーさんはおっしゃいます。
当たり前のことかもしれませんが、無駄の定義は人それぞれ。
ドミニック・ローホーさんのこの考えを知り、あらためて私は、彼女は柔軟な考えの持ち主だと感心しました。
私がこれまで抱いてきた漠然とした「無駄」の定義は、もしかしたら、これまで出会っただれかの価値観をそのまま引き継いだものかもしれません。
自分自身にとっての気持ちの良い生活を、今一度捉え直してみる良い機会だと思いました。