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刺青から紐解く炭鉱夫の恐怖。山本作兵衛の世界

投稿日:2012年5月14日 更新日:

筑豊炭坑絵巻 新装改訂版

2011年5月、画家山本作兵衛の絵が、日本で初めて世界記憶遺産に登録されました。
そして、今日のニュースによると、今年9月に行われるユネスコ世界記憶遺産事業20周年の記念式典にあわせ、山本の絵がパリのユネスコ本部に展示される見通しであるとのことです。

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山本作兵衛が描いた炭鉱夫

syamamoto sakubei

こちらの絵をご覧ください。ふんどしと草履しか着けていない裸同然の男。わずかに灯りがともされた暗がりの中で、彼は、金属の棒を金槌で岩に打ちつけています。手作業で岩を打ち砕いているのでしょう。そして、その男の身体には、大きく、龍の刺青が刻まれています。

この絵は、山本作兵衛の手による、炭鉱で働く男を描いた作品です。自らも炭鉱夫として働いた経験のある山本は、炭鉱の労働者の姿を多くの絵に残しました。

全身に刺青を入れるという行為は、明治期の炭鉱では珍しいことではなかったそうです。むしろ、典型的な炭鉱夫の姿なんだとか。
この頃の炭鉱では、刺青がないと一人前の労働者と見なされない風潮があり、駆け出しの若い炭鉱夫であっても、ほとんどの男は、こぞって、こうした刺青を入れていたようです。

炭鉱夫の恐怖、そして刺青

この絵の脇には、短い文章が、山本作兵衛自身の手で記されています。
この作品に限らず、彼の絵はしばしば文章と一体になっています。テキストから当時の炭鉱の様子を読み解ける、それがまた山本の絵の興味深いところです。

この作品には何が書いてあるのでしょうか。読みづらいので、以下に書きだします。

ヤマ人と入墨 はばをきかした刺青イレズミ。
昔々犯罪人を獄舎から出すとき体にイレズミして前科の印にしていたと言う
時が変って侠客、男を売出す表看板になり ヤマではイレズミにないものは下ざい人でないと軽蔑され馬鹿あつかいにされた
よって仕事は下手でも皆入れたものである
スジボリのときには特に痛むのでガマンとも云いホリモノとも言う
明治世七、八年頃には若い人もいれぬものが多くなったボツボツはばがきなぬ様になったからである。

山本によれば、刺青はむかし、前科者に刻まれた刻印でした。その後、時代が転じてヤクザ者が自らの男気を誇示するための証となり、それに感化されて、炭鉱夫の間で広く流行したということです。彼らにとって刺青は、死と隣合わせの炭鉱で、気持ちを奮い立たせるためのしるしだったのかもしれません。

もっとも、炭鉱労働者が刺青を入れた理由は、山本が説明しているこの理由以外にもあったようです。それは地底の魔物から身を守るための魔除けという意味です。図柄に龍や仏像が多いのは、そのためかもしれません。

刺青をした裸の男たちが暗い穴の中で岩を掻き出している姿というのは、一種異様な光景です。現代の感覚でとらえると、ある種の狂気と表現してもいいかもしれません。
日の光が差し込まない暗がりで、常に生命の危険に晒されながら作業に従事する。彼らが共通して抱いていたであろう恐怖を、私は彼らの刺青から感じ取ります。

山本作兵衛の作品が後世に伝える炭鉱の姿

私は、石炭の発掘が国の基幹産業であった頃の炭鉱を知りません。そこは私にとって、まったく馴染みのない世界です。しかし山本作兵衛の絵は、そうした未知の世界への糸口を、とても分かりやすく示してくれているように思います。

画像引用元:Hatena Fotolife

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