上色見熊野座神社(かみしきくまのいますじんじゃ)は、熊本の南阿蘇にある神社で、商売繁盛と縁結びの御利益があるパワースポットとして知られています。
山を貫通するようにぽっかりと空いた、縦横10m以上の大きな穴。
かつてこの地に逃げ込んだ妖怪が空けたと言われていて、力強い存在感を誇ります。
また、杉林に囲まれた参道もこの神社の見どころの一つです。
苔むした階段が神社へと続いていて、その脇には100基近い石灯籠。
凜とした空気のなか、一歩一歩神社へと登っていきます。
この記事では、この地方に伝わる妖怪のエピソードを交えながら、穿戸岩と上色見熊野座神社の魅力をお伝えします。
- 鳥居
- 狛犬
- 参道
- お社
妖怪が空けた大穴は必見
上の写真が穿戸岩です。
山の中腹に穴があいていて、その奥には青空が広がっています。
この穿戸岩は、鬼八(きはち)法師という妖怪が蹴破ってできた穴と言われています。
鬼八法師は九州に古くから伝わる妖怪で、首を切り落とされても再生するほどの蘇生力があるうえに、霜を自在に操って、農作物に被害を及ぼす存在として恐れられています。
鬼八法師が妖怪になった理由
この鬼八法師のエピソードはなかなか興味深いです。
鬼八法師はもともとは、阿蘇を開拓したとされる健磐龍命(たけいわたつのみこと)という神様の家来でした。
鬼八法師は、あるとき、主人の弓の練習に同行。
主人が弓を放って、鬼八が弓矢を拾い、それをまた主人が射つ、そんなことを延々と繰り返していたそうです。
鬼八法師は、99本まではおとなしく拾ってきていましたが、100本目でついに嫌気が差し、その弓矢を足の指で挟んで放り返したんだそうです。
それで逆に主人の健磐龍命の怒りを買い、鬼八法師は首をはねられてしまいました。
首を斬られた鬼八法師は恨みとともに天に昇り、阿蘇に霜の害をもたらす存在になったとされています。
鬼八法師は、襲い来る主人から逃れるために、現在の上色見熊野座神社がある高森地方に逃げ込んだという逸話が残っています。
そして、鬼八法師が健磐龍命から逃れるために蹴破ったのが、先ほどの穿戸岩であると言われています。
鬼八の怒りを静めるための霜神社
ちなみに、首を斬られた鬼八法師の怒りを鎮めるために建立されたのが、阿蘇山の北側にある霜(しも)神社です。
霜神社のすぐ近くには御手洗社(みたらいしゃ)があり、この場所では、切り落とされた鬼八の首を暖めるために、地域から選ばれた10歳前後の「火焚き乙女」が59日間にわたって火を焚き続けるという、「火焚き神事(ひたきしんじ)」という祭事が年に一度行われています。
このように、上色見熊野座神社と霜神社は鬼八法師を通して密接な関係があるため、上色見熊野座神社を観光した際には、霜神社にもあわせて訪れることをおすすめします。
- 霜神社の鳥居
- 御手洗社
- 火焚殿
- 神楽殿
アクセス
上色見熊野座神社へのアクセスは、車が便利です。
神社の向かいには駐車場もあります。
一方で、霜神社には駐車場がありません。
車で行く場合は、近くにある「霜宮農村公園」の駐車場を使うという手もあります。
上色見熊野座神社を題材にした作品
ところで、今回ご紹介した上色見熊野座神社は、「蛍火の杜へ」というアニメの舞台にもなっています。
原作は緑川ゆきさんの漫画で、それを大森貴弘監督がアニメ化した作品です。
触れると消えてしまうという、人でも妖怪でもない不思議な存在の少年と、人間の少女が織り成す、優しく、切なく、儚い恋の物語。
「夏目友人帳」の原点となった究極のラブストーリーが、待望の短編アニメーション映画となって登場します。アニメ版公式サイト
妖怪達の住む「山神の森」。
私たちが暮らす世界の、ほんの少し外側に存在する森を舞台としたお話しです。
神社の鳥居が妖怪と人間の世界を結ぶ入り口の役割を果たしていて、鳥居をくぐると、そこはもう妖怪達が住む世界です。
作中には、杉林に囲まれた参道とそこに並ぶ石灯籠も描かれており、上色見熊野座神社を訪れてからこのアニメを観ると、細かい発見があってさらに楽しめます。
私は漫画版とアニメ版の両方を観ましたが、漫画版は、ムダをそぎ落としたシンプルで美しい作品。
アニメ版は、その世界観を上手に膨らませて、二人の感情がより繊細に伝わる作りになっています。
ストーリーがとても綺麗なので、上色見熊野座神社を気に入った方は、これらの作品もぜひご覧ください。
ところで当サイトでは、熊本の観光スポットや熊本の郷土料理について、別記事で詳しく解説しています。
次の記事もあわせて参考にしてください。
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