バシリカ・シスタン(トルコ語:イェレバタン)は、トルコのイスタンブールにある、巨大な地下貯水池です。
無数の石柱が林立するその姿から、「地下宮殿」とも呼ばれています。
イスタンブール旧市街の地下には貯水池が複数ありますが、その中でこの「地下宮殿」が最大です。
奥行き140メートル、幅70メートル、高さ9メートルの直方体を、合計で336本もの円柱が支えています。
6世紀に建造され、ビザンツ帝国の人々の生活を潤してきた超大容量の水瓶。
現在では、博物館として一般の観光客にも開放されています。
バシリカ・シスタンは、ただの地下貯水池とは思えないほど豪華な造り。
薄明かりに照らされた石柱群が妖しく光る姿は、雰囲気満点です。
イスタンブールの地下宮殿、バシリカ・シスタンの魅力をお伝えします。
イスタンブール地下宮殿の基本情報
上の写真は、バシリカ・シスタンの入り口の建物。
行列が出来るほどの人気です。
まずは、バシリカ・シスタンの入場料や営業時間などの基本情報についてお伝えします。
ちなみに、バシリカ・シスタンはミュージアムパスでは入場できません。
営業時間 | 9:00〜18:30 イスラム教の祝日の初日は13:00から。 |
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定休日 | なし |
入場料 | 最新の料金はこちらで確認。 記事投稿時点では20トルコリラ。 |
公式サイト | https://www.yerebatan.com/en |
行き方 | トルコ・イスタンブールの旧市街内 |
イスタンブール地下宮殿の歴史
名前の由来
バシリカシスタンを英語で書くと「Basilica Cistern」。
Basilicaは「聖堂」、Cisternは「貯水槽」という意味です。
かつてこの場所の上には聖堂が建っていて、その地下を掘って貯水池を造ったことから、こうした名前が付いています。
また、トルコでは、イェレバタン(Yerebatan)と呼ばれています。
Yereは「地面」、Batanは「沈んだ」という意味のトルコ語です。
歴史
冒頭でお伝えした通り、バシリカシスタンが完成したのは、6世紀。
ビザンツ帝国のユスティニアヌス1世の時代です。
10万トンの貯水量を誇るとも言われるこの貯水池は、コンスタンティノープル(イスタンブール)の人々に生活用水を供給してきました。
15世紀にオスマン帝国がこの街の支配者となってからは、スルタンが住むトプカプ宮殿のための水瓶として使われるようになります。
ところが、オスマン帝国が独自の水道施設を作り上げたことで、次第にこの貯水池は使われなくなっていきました。
バシリカシスタンが再び注目されたのは、17世紀半ばです。
オランダ人旅行者のギリアスが、西洋人として地下宮殿を「再発見」し、それを旅行記として発表したことで、西洋の人々の関心を集めることになります。
世界的に有名なアヤソフィアのすぐ近くに隠された謎の地下施設。
そのミステリアスな雰囲気が、人々の好奇心をくすぐったのかもしれません。
ちなみに、ギリアスの旅行記によると、当時の地下宮殿の上には民家が建っていて、住民たちは井戸のような穴を開けて水汲みしたり、あるいは魚を釣ったりしていたそうです。
その後、バシリカシスタンは何度か修復され、現在でもイスタンブールの観光スポットとして高い人気を誇っています。
イスタンブール地下宮殿の見どころ
大理石の石柱
バシリカシスタンの石柱は、そのほとんどが、古代の神殿で使われていた大理石を再利用しているそうです。
整然とならんだそれらの石柱が、アーチ状の天井を支えています。
2体のメデューサの首
こちらは、メデューサの首。
神殿の奥に2体あり、1体は横向き、もう1体は上下逆向きになっています。
なぜメデューサの首がこの場所に置かれているのか詳しいことは分かっていないそうで、魔除けの意味が込められているという説と、他の神殿で使われていたものがたまたまここに置かれただけという説があります。
ちなみに、メデューサとはギリシャ神話に登場する怪物で、目が合った者を石に変えてしまうと言われています。
泣いている石柱
泣いている石柱(Crying Column)と呼ばれるこの柱は、バシリカシスタンの建設中に命を失った数百人の奴隷たちのために建てられたそうです。
この柱は、他の柱とは違って表面が少し濡れているんだとか。
暗いので分かりづらいですけど、眼をこらすとそう見えなくもありません。
また、表面の模様は涙のようにも見え、悲しげな印象を受ける石柱です。
【番外編】ヴァレンス水道橋
バシリカシスタンから外に出て、西に数キロ進んだところには、ヴァレンス水道橋があります。
ヴァレンス水道橋は、ローマ帝国の時代に建設が始まった巨大な水道橋で、郊外から引いてきた水を市内に供給するために作られました。
ヴァレンス水道橋を流れてきた水は、バシリカシスタンを含む複数の地下貯水池に貯められていたそうです。
ヴァレンス水道橋自体も、なかなか見応えがあります。
全長971メートル、最大高さ29メートルの巨大な橋が、旧市街のど真ん中を横断しています。
橋の下には、多くの車が行き交うアタテュルク通り。
歴史の街・イスタンブールならではの光景です。
ちなみに、当時の水源は、イスタンブールの北側にあるベオグラードの森です。
その距離は直線で20キロメートル。
かなり遠くから水を引いていたようです。
❶地下宮殿
❷ベオグラードの森
以上、イスタンブールの地下宮殿「バシリカ・シスタン」についてお伝えしました。
バシリカ・シスタンは、地下貯水池という実用的な施設でありながら、同時に宗教的な厳かな雰囲気も感じる、とても興味深い空間です。
また、観光するうえでとても便利な場所にあるのも嬉しいところ。
イスタンブールの見どころが密集する、旧市街の中心エリアに位置しています。
イスタンブールに訪れた際には、ぜひバシリカ・シスタンにも立ち寄ってください。
ところで当サイトでは、現地トルコでの経験をもとに、トルコの観光スポットやトルコ料理について、別記事で詳しく解説しています。
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