熊本県を代表する人気郷土料理、「一文字(ひともじ)ぐるぐる」のレシピをご紹介します。
かなりユニークなこのネーミング。
「一文字」という熊本産のねぎをグルグル巻きにして作ることが、名前の由来になっています。
このお料理の素晴らしい点は、その歯ごたえです。
茹でたねぎをそのまま食べると口当たりが柔らかですけど、グルッと巻くことで、食感が大幅にアップ。
そのうえ、見た目もすっきりとまとまるので、食卓の脇役ながら、十分な存在感を発揮します。
倹約令で生まれたご馳走
一文字ぐるぐるは、ねぎ&からし酢味噌を材料とした超低コストなお料理ですが、しっかりとした満足感を得られます。
それもそのはずで、この料理が誕生した背景には、江戸時代に敷かれた倹約令が絡んでいます。
「一文字ぐるぐる」が誕生したのは、江戸時代の中期。
天明2年、肥後熊本藩の6代目藩主・細川重賢が藩政の立て直しのために倹約令を出し、それがきっかけとなって、酒の肴として考案されたと言われています。
実際に考案したのがどなたかは分からないですけど、ねぎをぐるぐる巻いてみるというアイデアは素晴らしい。
たったそれだけで、ただのねぎがご馳走に変わります。
安価な食材を使ったお料理でありながら、焼酎や日本酒との相性が抜群です。
一文字ねぎの特徴
ところで、このお料理に使われる「一文字ねぎ」は、熊本市認定の「ひご野菜」の一つで、おもに熊本市西区で栽培されています。
ただ、熊本県外では入手が難しいのが実情で、全国的には、かなり珍しい野菜になっています。
この「一文字ねぎ」は、関東地方で言う「わけぎ」と同種類のねぎで、球根によって増えるため、根元の白い部分が少しふっくらとしているのが特徴です。
ただ、わけぎよりも小さく、全長は、万能ねぎと同じくらいの30〜40センチ程度。
そのため、ぐるぐる巻いてもあまり厚みが出ず、一口サイズの、食べやすい大きさに収まります。
ちなみに、「一文字」というねぎの名前も変わっていますけど、その由来には、2つの説があるようです。
1つは、かつて熊本では一文字ねぎを「葱」という漢字一文字で表していたからという説。
もう1つは、土に生えている状態が「人」の字を逆さにした形に似ているからという説です。
さて、そんな一文字ですが、熊本県外の人間からすると、入手のしにくさが難点です。
そこで、この記事では、年中手に入る万能ねぎ(小ねぎ)でも代用できるレシピを解説します。
万能ねぎを使ってもとても美味しく仕上がりますよ。
材料
万能ねぎなどの小ねぎ(一文字でもOK) | 50g(1/2束) |
塩 | 小さじ1 |
醤油 | 小さじ1 |
白麦味噌※ | 大さじ1 |
酢 | 大さじ1/2 |
砂糖 | 大さじ1/2 |
練りからし | 小さじ1/8 |
水 | 小さじ1前後 |
- 他の味噌で代用OK。詳しくは下の文中参照。
作り方
冒頭でもお伝えしたとおり、「一文字ねぎ」は入手しにくいので、ここでは、他の小ねぎで代用するレシピをご紹介します。
ただ、わけぎを使うと、仕上がりが大きすぎて食べにくいです。
一文字は、根元がふっくらとしていて球根で増えていくという点においては、わけぎと共通していますが、全体のサイズ感は、万能ねぎ(写真中央)の方が近いです。
ですから、万能ねぎか、あるいは同程度の大きさの他の小ねぎで代用することをおすすめします。
味は、どれもねぎの仲間なので、よく似ています。
まず、万能ねぎなどの小ねぎ(50g)の根元を少し切り落とします。
そして、フライパンにたっぷりの湯(1リットルくらい)を沸かし、塩(分量外:小さじ1)を加え、根元だけを湯に浸して10秒茹でます。
一文字ねぎを使う場合は、根元が万能ねぎよりも太いので、少し長めに茹でるといいです。
根元を10秒茹でたら、全体を湯に浸して、さらに20秒茹でます。
茹で上がったら、冷水にさらして粗熱を取ります。
そして、水気を軽く絞ります。
続いて、醤油(小さじ1)を全体に回しかけます。
醤油をかけたら、今度は、水気をしっかり絞ります。
茹で上がったねぎに醤油を少しかけて水気を絞ると、ほんのりとした醤油の風味が付いて、美味しく仕上がります。
次に、ねぎを巻いていきます。
まず、ねぎ1本の根元を5〜6センチくらいの長さの3つ折りにします。
次に、束になった根元の部分を芯にして、葉の部分を斜め45度くらいにずらします。
そして、葉をぐるぐると茎に巻きつけます。
巻き終わりに近づいてくると、残った葉の中に空気が入ってふっくらと膨らみ、巻きにくいことがあります。
そんな場合は、その葉の部分を楊枝で刺して穴をあけるか、少し切るなどして中の空気を逃がすといいです。
巻き終わりは、1周半して中心部分にくるようにすると、見た目がきれいです。
最後に、巻き終わりを下に隠すようにして、手で全体をきゅっと握れば、型くずれしません。
からし酢味噌は、材料すべてを混ぜるだけで作れます。
使用する味噌は、白い麦味噌が一番おすすめです。
熊本ではもともと麦味噌がよく使われており、一文字には白い麦味噌をベースにしたからし酢味噌を合わせるのがポピュラーです。
ただ、麦味噌がない場合は、他のものでも作れます。
赤味噌を使う場合は、砂糖の量を調整して、レシピよりも少し甘めに作るといいです。
ねぎを皿に盛り、からし酢味噌をのせたら完成です。
茹でたねぎをグルグル巻くことで、何層にも重なって、柔らかいながらも心地良い食感が生まれます。
また、大きさもちょうど一口サイズなので、とても食べやすいのも嬉しいところです。
お味の方は、風味が良くてクセになる味わい。
茹でて辛味が抜けたねぎに、酢味噌のコクと酸味が加わって、とても美味しくいただけます。
箸休めからおつまみまで、幅広い場面で活躍するお料理です。
熊本の一文字ぐるぐる
最後に、現地熊本で出会った「一文字ぐるぐる」を写真で紹介します。
こちらは、熊本県熊本市にある郷土料理店「青柳」の「一文字ぐるぐる」です。
このお店は、熊本の名物料理をまとめて堪能できる人気店。
上の写真は、コースメニューの前菜盛り合わせを撮影したものです。
同店のからし酢味噌は、地元でポピュラーな麦つぶ味噌をベースにしていて、少し甘めなのが特徴です。
ねぎとの相性はもちろん抜群で、お酒のおつまみにぴったりのお料理でした。
なお、私が訪れた時期が「一文字」の旬から外れていたので、この「一文字ぐるぐる」には、他の小ねぎが使われていました。
一文字ねぎの収穫時期は、9〜11月と1〜5月の年2回。
それ以外の時期には、熊本でも「一文字」以外のねぎを「一文字ぐるぐる」に使うことがあるようです。
「一文字」以外で作っても、まったく問題なく美味しく食べられますよ。
ところで当サイトでは、熊本の郷土料理や熊本の観光スポットについて、別記事で詳しく解説しています。
次の記事もあわせて参考にしてください。
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