谷崎潤一郎さんの「陰翳礼讃 (中公文庫)」を読んでいたら、羊羹(ようかん)が食べたくなりました。
谷崎さんは同著書の中で、室内の暗がりの中に置いた羊羹を「瞑想的」と語っています。
羊羹の沈んだ感じの色合いを、実に上手く表現していると思いました。
今日はその羊羹をイメージして、甘さ控えめでちょっぴりかための、深い色の羊羹を作りました。
また出来上がりを収めた写真は、私なりにちょっと雰囲気を出してみました。
なお下の引用は、同著書から抜き出したものです。
この情緒溢れるくだりは、すべて羊羹について書かれています。
そういえばあの色などは瞑想的ではないか。
玉のように半透明に曇った肌が、奥の方まで日の光を吸い取って夢みるごときほの明るさをふくんでいる感じ、あの色あいの深さ、複雑さは、西洋の菓子には絶対に見られない。クリームなどはあれに比べると何という浅はかさ、単純さであろう。だがその羊羹の色あいも、あれを塗り物の菓子器に入れて、肌の色が辛うじて見分けられる暗がりへ沈めると、ひとしお瞑想的になる。
人はあの冷たく滑かなものを口中にふくむ時、あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ、ほんとうはそう旨くない羊羹でも、味に異様な深みが添わるように思う。
この世界観をレシピにするのは、なかなかハードルが高そうですが、私なりの瞑想的な羊羹を作ってみました。
谷崎潤一郎さんの「陰翳礼讃」をイメージして作った、羊羹のレシピです。
材料
小豆 | 150g |
グラニュー糖 | 120g |
塩 | 少々 |
粉寒天 | 3g |
水 | 150cc |
グラニュー糖 | 15g |
作り方
- 【こしあんをつくる】
小豆を洗い、たっぷりの水を加えて火にかける。
沸騰を1~2分維持し、湯を捨てる。再度たっぷりの水を加え、差し水をしながら柔らかくなるまで約30分煮る。
グラニュー糖(120g)・塩を加え、鍋底が焦げないように時々混ぜながら暫く煮る。
木べらで鍋をかき混ぜた時に、底が見える位に水分が飛んだら火を止める。
熱いうちに裏ごしする。 - 粉寒天と水を鍋に入れて火にかけ、寒天を煮溶かす。
グラニュー糖(15g)と1のこしあんを加え、弱火にかけながら2~3分練る。 - 水で濡らした型に2を流し入れる。
粗熱がとれたらラップをかけ、冷蔵庫で冷やし固めたら完成です。
甘さ控えめでしっかりとしたかたさのある、濃い色の羊羹です。
「陰翳礼讃」の世界観を、少しは表現できたと思います。