ステーキの焼き方。水島弘史シェフの科学的にも理にかなったレシピ。

ステーキの焼き方

フレンチのシェフ・水島弘史さんがすすめる、上手なステーキの焼き方をご紹介します。

水島さんは、科学的な視点に基づいた「低温調理法」を家庭料理にいかす方法を提案している方で、料理本などでそのノウハウを紹介しています。

私はそのうちの何冊かを読んだことがありますが、どれも料理の常識を覆す斬新な内容になっています。
主に肉を焼く時などに、私は、水島さんの著書から得た知識を活かしています。
ジューシーで美味しく仕上がるので、水島流の肉の焼き方がとても気に入っています。

さて、ステーキの焼き方ですが、水島さんによると、5つのポイントをおさえるだけで、特売品の安い肉も、高級ステーキのように美味しくなるそうです。

(一部情報元:テレビ朝日「林修の今でしょ!講座」科学で料理がこんなに美味しくなる 2015年4月28日放映)

ステーキの焼き方

焼き上がったステーキ

高級な牛肉でつくったステーキは、身が柔らかくてジューシー。
香りも高く、とても美味しいものです。
一方の安い肉は、固くて香りや水分に乏しいことが多いですよね。

これからご紹介するのは、こうした安い肉の欠点を補ったステーキの焼き方です。

水島さんによると、科学的にも理にかなった焼き方をすることで、100g300円の特売の肉を100g3,000円の高級肉に変えることができるそうです。

なお、ステーキ肉は、霜降りとくらべて旨み成分のアミノ酸が多く含まれる、赤身のヒレ肉を使います。

赤身は霜降り肉にくらべて焼くのがとても難しいそうですが、科学的調理法で旨みをしっかり閉じ込められれば、特売の赤身肉でも、驚くほど美味しいステーキに焼きあがるそうですよ。

ステーキを上手に焼く5つのポイント

さて、水島さんがすすめる科学的なステーキの焼き方は、一般的な方法とはまったく異なります。

まず、生肉の状態で塩・コショウはしません。
塩は焼いている途中で振り、コショウは、完全に焼きあがってから振ります。
次に、強火で焼かずに、低温のオーブンでじっくり焼いてから、最後にフライパンでこんがりと焼きます。
そして、焼き上がりはすぐに食べずに、しばらく休ませます。

ステーキを焼く際のポイントは、次の5点です。

ステーキを上手に焼くための5つのコツ
  1. 和牛の牛脂を肉の両面に貼り付ける。
  2. サラダ油に浸したキッチンペーパーで肉を包む。
  3. フライパンで焼く前に、低温のオーブンで焼く。
  4. オーブンで焼いたあとに塩をする。
  5. 完全に焼きあがったらアルミホイルに包み、肉をしばらく休ませる。

上記5点についての水島さんの説明をまとめると、次のようになります。
なお、これらのポイントをもとにおこしたレシピもその後に記しましたので、ぜひご覧ください。

和牛の牛脂を肉の両面に貼り付ける

安い肉の乏しい香りを補うために、下準備の段階で和牛の牛脂を使います。

和牛の牛脂には「ラクトン」という牛肉独特の良い香り成分が多く含まれており、牛脂を肉の両面に貼り付けることで、その香りを移します。

1センチくらいの厚さに切った牛脂を、肉の両面それぞれが7割くらい埋まるように並べ、牛脂が肉に貼り付いているような感じにします。

サラダ油に浸したキッチンペーパーで肉を包む

安い肉のアクやくさみを取り除くため、サラダ油に浸したキッチンペーパーで、牛脂をつけた肉を包みます。

油の量は、けっこうたっぷりめ。
キッチンペーパー1枚につき、100mlもの油を使います。
キッチンペーパーに油をかけて、手で油を馴染ませてから、肉をしっかり包み込みます。

油の量は多すぎるように感じますが、水島さんによると、これくらいの量を使わないと、安い肉の臭みは取れないそうです。
なお、肉の表面についた油は、肉を焼くことでキレイになくなるそうですから、安心してください。

フライパンで焼く前に、低温のオーブンで焼く

水島さんによると、柔らかい食感のステーキに仕上げるには、低温でじっくり加熱する必要があります。
肉は急激な温度変化にさらしてしまうと、水分や旨みが出て行ってしまうからだそうです。

そうした点から、フライパンの上に生肉を直にのせて焼くのはNGです。
肉の温度が上昇しやすいためです。
そこで、フライパンで焼く前に少々時間をかけ、低温のオーブンで、じわじわと肉に火を通してしまいます。
ちなみに、一旦中まで火を通してしまうと、肉は、その後あまり固くはならないようです。

このようにオーブンとフライパンという2段階で加熱をすると、普通の人でも失敗することなく、ジューシーにステーキを焼き上げることができるそうです。

なお、オーブンで焼く際には、肉の下面が熱くなり過ぎないように、皿などの上に網をのせ、さらにその上に肉をのせると良いようです。
肉はキッチンペーパーで包んだ状態で、そのままオーブンに入れます。

120度に温めたオーブンで15分焼き、裏返してさらに10分。
合計25分ほどじっくり時間をかけて焼きます。
焼き上がりは、肉のまわりが薄っすらと白くなる程度ですが、それで十分なのだそうです。

オーブンで焼いたあとに塩をする

ステーキを焼く際には生肉に塩を振るという方は多いと思いますが、生肉に塩をしてしまうと肉の水分が出てしまうそうです。
そのため、塩は、オーブンで肉を焼いたあとに振ります。

塩の量は、肉の重量の0.8%。
ちなみに、0.8%というのは、人間の体内の塩分量と同じ濃度で、人が最も美味しいと感じる塩加減だそうです。

さて、塩をふったらいよいよ、フライパンで肉を香ばしく焼き上げます。
温めたフライパンに牛脂の油を引き、片面を30秒ほど焼き色がつくまで焼いて、ひっくり返して裏面はさっと焼きます。
肉の両面に軽く焼き色がつけばOKです。

そして、フライパンで焼き上げた後に、コショウをふります。
コショウは清涼感や香りがとても大事。
でも、焼く前にコショウをすると、焦げて苦みが多く出てしまいます。
ですから、肉の余熱を活かして、コショウの風味を引き出します。

完全に焼きあがったらアルミホイルに包み、肉をしばらく休ませる

これで肉が焼き上がりました。
すぐにでも食べたいところですが、ここでもう少し我慢してしばらく肉を休ませると、できあがりのジューシーさがダンゼン違ってくるそうです。

焼きたてアツアツの肉は、アルミホイルですぐにぴったりと包みます。
このようにしてしばらく置くと、肉の温度が下がり、肉の中の水分が落ち着くため、切っても肉汁が溢れ出すことはないそうです。

水島シェフのステーキのレシピ

以上の5つのポイントをまとめると、下のようなレシピになります。

なお、ステーキソースは、赤ワインとみりんという意外な調味料の組み合わせで作ると、美味しいとのこと。
甘みが足りない赤ワインにみりんを加えると、科学的に最高のステーキソースになるそうですよ。

ステーキソースを作る際には、赤ワインやみりんの水分と、最後に加えるバターの脂分を、限りなく均等に混ぜ合わせる(乳化させる)必要があります。
そうすると、まろやかなとびきり美味しいソースができるそうです。

材料

赤身のヒレ肉 1枚
サラダ油 100ml
牛脂 適量
肉の重量の0.8%
コショウ 少々
キッチンペーパー 1枚
ステーキソース
赤ワイン 30g
みりん 20g
0.4g
バター 20gくらい
  • 情報元のテレビ番組では、バターの分量についての説明がありませんでした。20gというのは、あくまでもテレビの映像をもとに私が推測した量です。
    私の記憶では、水島さんはステーキソースのレシピを著書で紹介していません。
    そのため、実際に使われたバターの量は、水島さんに直接伺うか、テレビの映像から察するしかありません。

作り方

  1. ステーキ肉の両面に、1センチくらいの厚さに切った牛脂を貼り付ける。
  2. キッチンペーパーにサラダ油をかけ、油をしっかり馴染ませる。このキッチンペーパーで、1の牛脂を貼り付けた肉を包む。
  3. 120度に温めたオーブンで、キッチンペーパーに包んだ状態の肉を15分焼き、そのまま裏返してさらに10分焼く。
  4. 【ソースを作る】ワインとみりんを小鍋に入れて煮詰め、とろみが出たら塩を加える。
    さらに、バターをひとかたまりの状態で鍋に入れ、鍋を傾けてバターを鍋の端に寄せる。
    ワイン&みりんを泡だて器で撹拌しながら、水分と脂分をなるべく均等に混ぜるようなイメージで、バターの脂分を少しずつワイン&みりんの中に溶かしこむ。
    完全にバターが溶けたら、ステーキソースの完成。
  5. 3の肉に重量の8%の塩をする。
    温めたフライパンに牛脂のアブラを引き、肉の片面を30秒ほど焼く。さらにひっくり返して、もう片面にさっと焼き色をつける。
  6. 焼きあがったばかりのアツアツの肉を、アルミホイルでぴったり包んでしばらく置いたらできあがり。

できあがったステーキは、切り口が美しいロゼ色で、切っても肉汁が出ることはありません。
食感はとても柔らかく、深い味わいのステーキに仕上がるそうです。

また、ソースは、鮮やかなワイン色。
ワインのコクやバターの香ばしさが感じられるそうです。

情報元のテレビ番組で試食した方は、「こんなに旨いんだったら、特売肉の方がいい」と、焼きあがったステーキの美味しさを語っていました。

なお、ステーキの上手な焼き方は、水島さんの著書「水島シェフのロジカルクッキング――1ヵ月でプロ級の腕になる31の成功法則」や「強火をやめると、誰でも料理がうまくなる! (講談社+α文庫)」に詳しい解説があります。
合わせて参考にしてください。

【追記】
  • このステーキのレシピを試したという方から、当サイトあてにメールをいただきました。
    レシピ通りに作ると、ステーキが硬めのウエルダンになってしまうとのこと。
    使用する牛肉の大きさによって出来上がりは変わってくるとは思いますが、このレシピをもとにステーキを焼く時は、オーブンの温度設定や焼き時間などを様子を見て調整してみてください。

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