朴葉寿司(ほおばずし)の作り方をご紹介します。
朴葉寿司とは、朴の木の生葉を使った、岐阜県の伝統料理のこと。
もともとの由来は、農作業で忙しい時でも手軽に食べられる携帯食で、今で言うお弁当のような食べ物でした。
朴葉でご飯を包んであるので、手を汚さずにおにぎり感覚で食べられますし、朴葉の殺菌効果のおかげで保存性も高まります。
しかも、朴葉には清涼感のある香りがあるため、お寿司の風味がアップして、とても美味しくいただけます。
朴葉寿司がよく食されているのは、飛騨地方や中津川から下呂にかけての山間部です。
これらの地域のスーパーでは、5〜6月くらいの時期になると、朴葉寿司の具材の特設コーナーが設けられることもあります。
記事の後半では、現在の岐阜県で食べられている朴葉寿司についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
なお、この記事は、飛騨地方で最も人気のある観光地、合掌造りの里「白川郷」よりお伝えします。
材料
朴葉 | 6枚 |
しめサバ・鮭フレーク・錦糸卵・干し椎茸の甘辛煮・紅しょうが・きゃらぶきなど※ | 適量 |
米 | 2合 |
水 | 360ml |
塩 | 小さじ1 |
砂糖 | 大さじ2と2/3 |
酢 | 大さじ4 |
- 具材は好みでいくらでも変えられます。詳しくは朴葉寿司の具材を参照。
レシピ・作り方
- 米を洗う
- 炊飯器で炊く
- ① 米(2合)を洗ってザルに上げ、炊飯器の内釜に入れて、水(360ml)を加えて炊きます。
- 酢飯を作る
- 冷ます
- ② 炊きあがったご飯を飯台(もしくはボール)に移し、塩・砂糖・酢を混ぜたものを加え、しゃもじで切るように手早く混ぜます。
- ③ うちわなどであおいで冷まし、ひっくり返すように混ぜます。
もう一度あおいで、人肌まで冷まします。
より詳しく:酢飯の作り方
- ④ 朴葉(6枚)をきれいに洗い、水気を拭き取ります。
補足:新緑の朴葉を使う
- ⑤ 酢飯を6等分くらいに分けて、朴葉の一番広いところにのせ、四角い形にととのえます。
- ⑥ 酢飯の上に、好みの具材をのせます。
しめサバなどのメインになる魚の具材を含めて合計4〜5種類くらいあると、豪華ですし、見た目も良いです。
補足:朴葉寿司の具材
朴葉寿司の包み方
続いて、酢飯を朴葉で包みます。
- ⑦ 【左右を折りたたむ】
葉の真ん中を縦に通っている「葉脈」を中心に、両サイドを折りたたみます。
- 手前側を押さえる
- ⑧ 【手前側を折りたたむ】
酢飯で盛り上がった部分の手前を指でおさえ、葉先を折りたたみます。
- 奥側を押さえる
- ⑨ 【奥側を折りたたむ】
酢飯の向こう側を指でおさえ、酢飯が入った部分をひっくり返します。
- ひっくり返す
- 楊枝を刺す
- ⑩ 酢飯を包み終えたら、葉の裏側が見えるようにひっくり返します。
- ⑪ 葉脈の脇から楊枝を刺して、下側の葉にも楊枝を通し、葉脈の両端を楊枝で止めます。
楊枝を刺す代わりに、いぐさの紐などで縛っても良いです。
- ⑫ 包み終えた朴葉寿司をぴったりとくっつけて並べ、まな板や皿などの軽めの重しをのせて、3時間〜半日くらい置いて味を馴染ませます。
時間がある場合は、半日くらい置いた方が、朴葉の良い香りがしっかり移って美味しくなります。
こちらが完成した朴葉寿司です。
素朴なお料理でありながら、見た目はかなり華やかです。
濃緑の葉に包まれて、具材の鮮やかさが際立ちます。
もちろん、お味の方も美味しいです。
酢飯の味はキュッと引き締まっていてコクがあり、そこに朴葉の爽やかな香りが加わって、奥行きのある味に仕上がります。
見た目の雰囲気が良くて味も良い、郷土料理のおすすめレシピです。
レシピの補足説明
朴葉寿司の具材
朴葉寿司の具材は、お好みでいくらでも変えられます。
なかでも、岐阜県でよく使われる具材は次のとおりです。
上の段は、左から、「しめサバ」「あなご」「鮭フレーク」「ちりめんじゃこ」「あさりの佃煮」「錦糸卵」。
下の段は、「干し椎茸の煮物」「人参と油揚げの甘辛煮」「きゃらぶき」「しその実の漬物」「紅しょうが」「でんぶ」です。
他には、「かんぴょうの煮物」や「油揚げの煮物」もよく使われます。
リンクが貼ってある具材は作り方を紹介していますので、合わせて参考にしてください。
珍しいところでは、「へぼ」と呼ばれる蜂の幼虫が具材として使われることもあります。
なお、朴葉寿司を作る工程で常温にしばらく置くので、酢でしめていない生の魚などは避けた方が良いです。
新緑の朴葉を使う
お寿司作りに使われる朴葉は、新緑の柔らかいものを使うのが一般的です。
時期としては、5月末〜6月くらいのものです。
この時期の葉は柔らかいです。
でも、夏まで育つと、葉がかたくなってお寿司が包みにくくなります。
香りは夏になっても変わりませんが、お寿司に使いやすいのは、やはり初夏の朴葉です。
朴葉を冷凍したり蒸してから使うのはNG
生の朴葉を冷凍したり蒸したりしてから使うのはやめた方がいいです。
朴葉の風味がアップするのではないかと思って試してみましたが、全くそのようなことはありませんでした。
特に、生の朴葉を自宅で冷凍するのはかなりNGです。
色が黒っぽくなるうえに、香りが鼻につくようなエグミのあるものに変わりました。
ちなみに、朴葉は、市販の冷凍ものも出回っていてます。
こうした市販品の場合は、自宅で冷凍した朴葉よりも品質はかなりいいです。
ただ、やはり旬の生葉を使う方が、断然風味がいいです。
一方の蒸した朴葉は、不快なニオイなどはありませんでしたが、風味が良くなるわけでもありません。
余った葉を切るかはお好みで
包んだ後に葉っぱの茎の方がすこし余りますが、この部分を切り落とすかどうかはお好みです。
岐阜県の朴葉寿司
ここからは、岐阜県で食べられている朴葉寿司について、写真とともにお伝えします。
朴葉寿司は、生朴葉の季節(5月〜6月くらい)になると、岐阜県内の一部の地域で販売されるようになります。
とは言え、朴葉寿司はもともと家庭料理なので、飲食店で供されることはあまり多くなく、スーパーや道の駅で見かけることの方が多いです。
朴葉寿司の美味しいお店を探そうと思っても、そもそも扱っているお店が少ないのが現状です。
また、同じ岐阜県内でも、岐阜市内で見つけるのは意外と難しいです。
飛騨・下呂・中津川など、昔から食されているエリアでないとなかなか出会えません。
こちらは、岐阜県発祥のスーパー、「バロー(valor)」で販売されていた朴葉寿司です。
バローの朴葉寿司
@岐阜 高山
こちらのスーパーの朴葉寿司の具材は2種類あって、左側は、「ます」「小海老の佃煮」「錦糸玉子」「きゃらぶき」「青しその実」。
右側は、「しめ鯖」「あさりしぐれ煮」「錦糸玉子」「どんこ椎茸煮」「紅生姜」です。
どちらも、岐阜県で親しまれている、定番の具材の組み合わせです。
こちらは、中津川の道の駅で売られていた、朴葉の生葉です。
朴葉寿司が昔から作られてきた地域では、5月くらいになると、道の駅やスーパーを中心に、こうした手作り用の朴葉も販売されます。
ちなみに、朴葉の値段は10枚入りが100円くらい。
とても安いです。
にぎわい特産館の朴葉
@岐阜 中津川
こちらは、朴葉寿司の具材がスーパーで売られている様子です。
並んでいるのは、左上から、「しめ鯖」「銀鮭ほぐし」「厚焼玉子」「椎茸うま煮」「蜂の子花九曜煮」「きざみのり」「でんぶ」「錦糸たまご」「細切生姜」「青しその実」「あさりしぐれ」です。
朴葉が旬の時期には、売り場をかなり広く割いて、こうして具材もたくさん販売されます。
バローの朴葉寿司の具
@岐阜 恵那
以上、岐阜の郷土料理、朴葉寿司についてお伝えしました。
最大のネックは生の朴葉の入手ですが、朴の木自体は日本各地に生えているので、意外と身近な場所でゲットできるかもしれません。
また、少し値は張るものの、ネット通販でも購入できます。
雰囲気満点のお料理なので、みんなでワイワイ食べると楽しいですよ。
ところで当サイトでは、岐阜の郷土料理について、別記事で詳しく解説しています。
次の記事もあわせて参考にしてください。
レシピ、大変参考になりました。保存させていただきます。
今日、生のほうばの葉をもらったのですが、近いうちにほうば寿司を作る予定です。
どのように葉を保存するのが良いでしょうか?
冷蔵庫?常温?
アドバイスをよろしくお願いします。ちなみに1週間以内で使う予定です。
朴葉を1週間以内に使うのなら、冷蔵庫での保存をおすすめします。
その際には、茎をそろえて水で濡らしたキッチンペーパーで包み、全体をビニール袋で密閉して、茎を下にして立てて冷蔵庫の野菜室に入れると良いです。
あまり長く置くと風味が損なわれやすいので、なるべく早く使うと良いと思います。
朴葉の清涼感のある良い香りをぜひ楽しんでください!