
ナン(Naan)の作り方を、本場インドで撮影した動画を交えてご紹介します。
ナンは、小麦粉を発酵させて作るパンの一種で、インド料理の人気メニューのひとつ。

日本の家庭で手作りするときは、オーブンを活用するのがおすすめです。
火力はタンドール窯には及びませんが、オーブンでも十分美味しく仕上がります。
インドのナンは、生地をある程度発酵させてから、火にかけます。
発酵と言っても市販のイースト菌などを加えるのは少数派で、自然界に存在する「野生酵母」を利用するのが一般的なやり方です。
野生の酵母菌は、ナンの原料となる小麦粉の中にもいますし、あるいは空気中にもいますし、多くの場所に存在します。
そうした野生の酵母菌の働きを借りて、生地を常温で寝かせながら、ゆるやかに発酵させていきます。
ただ、野生の酵母菌は、季節や場所によって種類も数も異なるので、上のやり方だけだとなかなか安定して生地が膨らみません。
日本でナンを自作する時は、重曹などを加えて、発酵させずにすぐに焼くこともできます。
でも、時間がある場合は、やはり発酵させるのがおすすめ。
生地をこねてから2〜6時間くらい置くと、自然発酵による風味が加わってより美味しく仕上がります。

今回ご紹介するナンも、ヨーグルトを使ったレシピになっているので、参考にしてください。
この記事では、「本場インドの本格ナンの作り方」と「日本で簡単にナンを作る方法」の2パターンをそれぞれ動画でご紹介します。
本場インドのナンの作り方
まず最初に、インドで実際にナンが作られている様子をご紹介します。
上の動画は、インド屈指の観光地、北インドのジャイプルで撮影したものです。
動画のバックに流れているのは、イスラム教のコーラン。
「ナーン」というのは元々はペルシャ語で、イスラム圏とも深いつながりがあります。
動画のお店では、ドラム缶のようなものをもとに作った簡易的なタンドールでナンを焼いています。
ナンの作り方は、とても簡単です。

そして、生地を常温に数時間置いて自然発酵。

タンドール窯はとても火力が強いため、短時間で、こんがり美味しく焼き上がります。
なかなか便利なタンドール窯ですが、こうした窯を持っている家庭はインドでも少数派。
ですから、ナンは、家庭で手作りするのではなく、お店で買うのが一般的なようです。
なお、インドはとても広い国で、場所によって文化が大きく異なります。
ナンは、もともとは、西方から北インドのパンジャーブ州やデリーなどに伝わった食べ物なので、南インドの人は未だにあまり食べません。
もちろん、扱っているお店もありますが、北インドほどポピュラーではない印象です。
インド全土で広く食べられているのは、ナンよりもチャパティです。
チャパティも小麦粉を焼いて作るパンの一種ですが、こちらは精白されていない安価な小麦粉で作れるということもあり、南北を問わず、ナンよりも幅広い層に受け入れられています。

ナンの方がクセがありませんが、興味がある方は、チャパティを試してみるのもいいと思います。
日本で作れるナンの簡単レシピ
ここからは、タンドールなしで、日本で手軽に「ナン」を作る方法をご紹介します。
強力粉 | 250g |
サラダ油 | 大さじ1 |
ヨーグルト | 30g |
牛乳 | 150ml程度 |
塩 | 小さじ1 |
砂糖 | 大さじ1 |
重曹※ | 小さじ1/4 |
ベーキングパウダー※ | 大さじ1/2 |
※重曹のみ(小さじ1/2)、もしくは、ベーキングパウダーのみ(大さじ1)で代用可。文中参照。
- カロリー
- 1枚:297kcal
- 強力粉とAをボールに入れ、なめらかになるまで5分ほどこねる。
サラダ油を加え、全体に馴染むまでこねる。 - 【お好みで】生地をボールに入れ、ラップをふんわりとかぶせて常温に2〜6時間ほど置く。(置く時間は省いてもOK。その場合は工程3に進む。)
- 生地を4等分し、打ち粉(分量外)をし、それぞれを平たい円形にのばす。
- 天板にクッキングシートを敷き、生地を1枚のせる。高温(できれば250度以上)に予熱したオーブンで、焦げめが付くまで5分ほど焼いたらできあがり。
お好みで溶かしバター(分量外)を塗って食べても美味しい。
写真をもとにレシピを説明します。

【工程1】
まず、強力粉(250g)とAをボールに入れ、手で5分ほどこねます。
Aは、ヨーグルト(30g)・牛乳(150ml程度)・塩(小さじ1)・砂糖(大さじ1)・重曹(小さじ1/4)・ベーキングパウダー(大さじ1/2)です。
塩加減は、インドらしく少ししっかりめになっていますので、お好みで小さじ5/6に減らしてもいいです。
生地がなめらかになったら、サラダ油(大さじ1)を加え、全体に馴染むまでさらにこねます。
インドでは、ナンの生地にヨーグルトを加えるレシピが人気があります。

ヨーグルトに含まれる乳酸菌が増殖して乳酸発酵が進むと、生地のpHが酸性に傾き、酵母菌が活動しやすい環境になるためです。
また、生地を発酵させずに焼く場合も、ヨーグルトは役立ちます。
重曹がヨーグルトと反応して炭酸ガスが発生するので、その状態ですぐに焼くと生地が膨らみやすくなります。
なお、今回のレシピでは重曹とベーキングパウダーを両方とも使用していますが、どちらか一方だけを使うこともできます。
重曹だけで膨らませると、やや黄色ぽくなり、少しクセのある味に仕上がりになります。
一方で、ベーキングパウダーだけを使うと、淡白な味に。
私としては、両方を併用することで、重曹のクセをやや残すのがおすすめです。

【工程2】
生地ができたら、お好みで、生地を常温にしばらく置きます。
置く時間は少なくとも2時間くらいがおすすめです。
冬場(気温20度前後の室内)でも、2〜6時間置くだけで風味が少し変わってきます。
暑くない季節だったら、常温に1日置くのもアリ。
ゆったりめに時間を取ると、生地がじわじわと自然発酵して、風味が豊かになりますよ。
一方で、早く食べたい場合は、生地を置かずに、そのまま成形して焼くこともできます。
このナンは、重曹とペーキングパウダーを使っているので、発酵なしでも膨らみます。
その場合は、すぐに【工程3】に進んでください。

【工程3】
次に、生地を4等分し、それぞれを手で丸めます。

そして、打ち粉(分量外:強力粉でOK)をし、それぞれを麺棒などを使って、平たい円形にのばします。
形はお好みで構いません。

日本のインド料理店でよく見る、丸みのある二等辺三角形に成形しても、もちろんOKです。

【工程4】
最後に、天板にクッキングシートを敷き、生地を1枚のせます。
そして、高温(できれば250度以上)に予熱したオーブンで、焦げめが付くまで5分ほど焼いたら完成です。


こちらが焼き上がり。
お好みで溶かしバター(分量外)を塗ると、バターナンになります。
このナンは、出来たてが一番美味しいです。
アツアツのうちにお召し上がりください。
インドのナンを写真で紹介
ここからは、本場インドのナンを写真でご紹介します。

こちらは、インドを代表する高級ホテル「タージマハル・ホテル」で食べたナン。
本場インドのナンは、平たい円形で、チャパティと同じくらい薄いのが一般的です。
Taj Mahal Hotel「MASARA CRAFT」
@インド ムンバイ

こちらは、インドのチェンナイで食べたバターナン。
インドのバターオイル「ギー」がたっぷりかかっており、みじん切りにしたパクチーが散らされています。
Annalakshmi Restaurant
@インド チェンナイ

こちらは、チェンナイのホテルのレストランで食べたバターナン。
大きさはこれくらいが最もポピュラーで、直径は20センチ、薄さは5ミリくらいです。
ちなみに、右上にあるのは「ケサル・ラスマライ(Kesar Rsmalai)」というインドのカッテージチーズ「パニール」を使ったデザート。
右下にあるのは、パクチーと玉ねぎのソースを使ったタンドリーチキンです。
ANISE Restaurant
@インド チェンナイ

こちらは、ムンバイのノンベジレストランで食べた「ガーリックナン」。
インドでガーリックナンといえば、みじん切りにしたにんにくをたっぷり使っているのが一般的です。
生地は薄くて香ばしく、にんにくの風味が絶妙に合います。
Pratap Lunch Home
@インド ムンバイ

こちらは、港町ムンバイの人気シーフードレストランで食べたナン。
手前にある黄色っぽいのがチーズナンで、うしろがバターナンです。
チーズナンは、粉状に砕いたチーズが生地の間に挟まっていて、濃厚な味わいです。
MAHESH LUNCH HOME
@インド ムンバイ

最後に、日本で簡単につくれるナンのレシピをあともう1品ご紹介します。
こちらは、ホットケーキミックスと薄力粉を混ぜて、フライパンで焼き上げるナン。
ホットケーキミックスを使うと本場のナンよりも甘みがありますが、発酵なしで作れるので手軽です。
ところで、当サイトでは、現地インドでの経験をもとに、インド料理やインドの観光スポットについて別記事で詳しく解説しています。
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