インドで飲まれている牛乳について解説します。
インドの宗教で最も幅を利かせているのはヒンドゥー教。
インドの人口の8割がヒンドゥー教徒と言われています。
でも実際は、たしかに牛肉は食べないものの、牛乳は皆さん普通に飲んでいます。
むしろ、インドの牛乳の生産量・消費量はともに世界最大で、飲み方や加工方法はバリエーションが豊富。
この記事では、インドで牛乳がどのように飲まれているか、そしてどのような食べ物に加工されているか解説します。
インドの牛乳の飲み方
まずは、インドで牛乳がどのように飲まれているか簡単に説明します。
インドでも、日本と同じように牛乳をそのまま飲むこともあります。
ただ、ひとくちにミルクと言っても、いろいろあります。
写真は、インドのホテルの朝食でいただいたミルク。
この日は、4種類のミルクが用意されていました。
- 普通の牛乳(Cold Milk)
- 温かい牛乳(Hot Milk)
- 脱脂乳(Skim Milk)
- バターミルク(Butter Milk)
インドでは、脱脂ミルクやバターミルクも、普通に朝食に出てきます。
ちなみに、これら4種類のミルクと一緒に並んでいるもう1種類の白い液体は、ヨーグルトドリンクのラッシーです。
普通の牛乳に関しては、冷たいものも温かいものも、日本の牛乳と味はほぼ変わりません。
インドでは水牛のミルクも売られていますが、主流は日本と同じくホルスタインのミルク。
日本人にも親しみのある味です。
ちなみに、水牛のミルクの方が乳脂肪分に富んでいるので、味わいがよりリッチに感じられます。
脱脂ミルク(スキムミルク:Skim Milk)は、その名の通り、牛乳から乳脂肪分を取り除いたものです。
普通の牛乳を飲み慣れていると、少し物足りない味に感じるかもしれません。
ただ、最近のインドでは、身体のためにできるだけ油脂の摂取を控えたいという方が多いようなので、そうした層から支持されているのだと思います。
バターミルクは、バターやヨーグルトを作る時に分離した液体のことです。
名前からは濃厚な味をイメージするかもしれませんが、ほのかな酸味があり、味もあっさりとしています。
消化の促進や熱中症予防に効果があると考えられているそうです。
日本でバターミルクを試してみたいという場合は、ヨーグルトを使って似たような味を再現することができます。
ヨーグルトを水で薄めて塩を少し加えるだけで出来上がり。
甘みが全くないヨーグルトドリンクは日本ではわりと珍しいですけど、飲んでみると結構美味しいです。
チャイやコーヒーに牛乳を混ぜる
以前読んだ少し古い本のデータによると、インドの牛乳消費量のうち35%程度が、飲み物として消費されているそうです。
飲み方としては、先に紹介したようにそのまま飲むだけでなく、チャイやコーヒーに加えて飲む方法もポピュラーです。
こちらは、インドでよく見かけるチャイの屋台。
チャイとは、インドの国民的飲み物、ミルクティーです。
インドのチャイは、牛乳と砂糖をたっぷり使い、濃厚な甘みに仕上げるのが特徴。
チャイというとほんのりスパイシーなイメージがあるかもしれませんが、一番人気があるのは、紅茶とミルクと砂糖で作ったシンプルなミルクティーです。
本場インドのチャイの作り方は、リンク先を参考にしてください。
こちらは、伝統的なインドのコーヒーです。
昔ながらの製法で作ったコーヒーは、タミルナドゥ州など南インドの一部の地域でしか飲むことができません。
写真は、南インドのマドライで飲んだ本格インドコーヒーです。
撹拌する際のパフォーマンスもなかなかの見ものです。
牛乳でギーを作る
牛乳は、インドでも乳製品の原料として広く利用されており、インドの乳製品と言えばギーが有名です。
ギーとは、インドのバターオイルのこと。
野菜炒めやカレーなどの料理の他に、スイーツにもよく使われます。
このお菓子にもギーが使われていて、「コア(Khoa)」と呼ばれる固形状の濃縮乳と小麦粉と砂糖を丸め、ギーで揚げ、砂糖シロップに浸して作ります。
また、ギーは、料理の材料としてだけでなく、ご飯にそのままかけて混ぜて食べることもあります。
無塩バターをじっくりと煮詰めて、キッチンペーパーで濾したら出来上がり。
詳しいレシピは「ギーの作り方」をご覧ください。
牛乳からヨーグルトを作る
インドの乳製品と言えば、ヨーグルトも有名です。
インドには市販のヨーグルトももちろんありますが、自宅で手作りする家庭もかなり多く、その場合には、自家製ヨーグルトを種菌にして作ります。
インドのヨーグルトを実際に食べてみると、ごく一般的なものは、日本のヨーグルトよりも、やや酸味が強い傾向があるように思います。
インドでは、そのまま食べたり、ヨーグルトドリンクの「ラッシー」にして飲むことも多いですけど、料理の材料としてもよく使われます。
ヨーグルトを使った料理としては、ヨーグルトサラダの「ライタ」などが日本でも有名です。
ヨーグルトは、他にも、肉や魚の料理の風味付けにも使われます。
たとえば、タンドリーチキンの肉をヨーグルトに浸しておくと、味わいが増すだけでなく、肉が柔らかくなります。
また、日本ではあまり馴染みがありませんが、ヨーグルトをご飯に混ぜて食べることもわりと多いです。
ターリーやミールスなどの定食についてくるご飯にヨーグルトを混ぜて、食事の締めとしていただきます。
スパイスの効いたカレーに、さっぱりとしたヨーグルトが良く合います。
牛乳でお菓子を作る
また、インドでは、牛乳を使ったスイーツもとても多いです。
上の写真は、牛乳を煮詰めて濃厚な味わいに仕上げた「バルフィ(Balfi)」というお菓子。
他にも、にんじんと牛乳を煮詰めた「ガジャル・ハルワ(Carrot Halwa)」や、「キール(Kheer)」というミルク粥、そして「クルフィ(Kulfi)」というアイスクリームも有名です。
詳しくは、下のリンク先をご覧ください。
インドの人気スイーツを詳しく解説しています。
牛乳でチーズを作る
インドでは、チーズもよく食べられます。
特によく食べられているのは、「パニール」というあっさりとしたチーズ。
このチーズは、おかずやスイーツなど様々な料理に使われます。
こちらは、パニールとほうれん草を使ったカレー「パラクパニール(Palak Paneer)」です。
ただ、パニールほど市民権を得てないようで、こうしたチーズは、旅行者が多いホテルのレストランなどで食べられます。
以上、インドにおける牛乳の飲み方と牛乳を使った食べ物についてお伝えしました。
牛乳の食習慣は、現在ではインド全土に及びますが、ルーツを辿れば、もともとは北インドの食文化だと言われています。
それが13世紀ごろに南インドにも広まっていったのだとか。
現在でも北と南の食文化の違いは残っていて、北インドでは牛乳をよく使いますが、南インドではココナッツミルクを多用します。
インドはとても広い国なので、そうした地域ごとの食文化の違いを観察しながらインドを旅するのも、なかなか楽しいものです。
インドの食文化は多様なので、かなり面白いですよ。
ところで、当サイトでは、現地インドでの経験をもとに、インドの観光スポットやインド料理について別記事で詳しく解説しています。
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